Z0688-2-027

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保多舞とうろう

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絵師:芳年

落款印章:芳年(「大蘇」印)

画題:「新形三十六怪撰」「保多舞とうろう」

出版年:明治24年 (1891)

版元:佐々木豊吉


牡丹灯籠

この作品の題材となっているのは「牡丹灯籠」である。この物語が世の人々に知れ渡ったきっかけとなったのは、三遊亭円朝の「怪談牡丹灯籠」である。特に特徴的になっているのは、「カランコロン、カランコロン」と、下駄の音をさせながら霊の二人が登場するシーンであり、それまでの世の中で幽霊と言えば、「足がない。」などと言うような事が幽霊の特徴であったとされる当時の世の中の幽霊という固定概念を、「カランコロン」という音、そしてその音から連想させ、下駄の音がするということは、「足がある。」ということを連想させられることとなり、夜に響き渡る下駄の音、そして、足があるという二重の恐怖と、それまでの幽霊のイメージとは異なった幽霊の存在があるという驚きとを感じられる作品であることから、世に知れ渡ることとなり、そして最大の特徴である。


作品の場面は、夜、主人公が外に出た際、遠くの方から、「カラン、コロン」と下駄の音を響かせ女二人の幽霊どこからともなく登場する場面である。 この辺りからみて、題材となったのは、作品内にも記述されているように、「牡丹灯籠」と見て間違いないであろう。



作品の疑問点

この作品においての疑問点において、題材となっているのは「牡丹灯籠」であるが、三遊亭円朝の「怪談牡丹灯籠」では、灯籠をもっている女中は下駄をはいて、音を「カランコロン」とならしながら登場するのが最大の特徴であるのに対し、作品の女中は、下駄をはいていない。 では、どの牡丹灯籠がこの作品の本当の題材となっているものなのであろうか。


三遊亭円朝による牡丹灯籠

[1]

[2]


旗本飯島平左衛門の娘、お露は浪人の萩原新三郎に恋したあげく焦れ死にをする。お露は後を追って死んだ下女お米とともに、夜な夜な、牡丹灯籠を手にして新三郎のもとに通うようになる。その後、新三郎の下働き、関口屋伴蔵によって、髑髏を抱く新三郎の姿が発見され、お露がこの世の者でないことがわかる。このままでは命がないと教えられた新三郎は、良石和尚から金無垢の海音如来をもらい魔除けの札を張るが、伴蔵の裏切りを受け、露の侵入を許してしまう。


伽婢子の牡丹灯籠

毎年7月15日から24日までは、都の民家では精霊の棚を作って、古人の魂を祭るならわしになっている。(魂まつり) そこに様々な灯籠を持って飾ったりする様である。京都の五条京極にその男(萩原)が居た。街中を夜中に萩原が歩いている時に二人の女が現れる。


作品と重なる場面は、

「年二十歳ぐらいの美女が、十四・五歳の女の童に牡丹花の紋のついたきれいな灯籠を持たせて、しとやかに歩いていく。女の童は清らかな目元、楊柳の様にたおやかな姿、桂のように美しい眉、あでやかな黒髪。」 と、説明されている。


剪燈新話の牡丹灯籠

明州では、毎年正月の十五夜の日から五夜にかけて灯籠祭がおこなわれ、城下に住む男女は、こぞって祭りの見学をしていた。

ある街に喬(きょう)という青年が住んでおり、その喬が夜中(11時~1時)見物人も少なくなってきた祭り会場で二人の女性を見る。


作品と重なる場面は、

「双頭の牡丹んの花を描いた提灯を掲げた女中を先立ててその後ろに、年の頃は十七・八歳ほどで、紅い袴に緑の上衣という装い、美しい女性が二人で西の方へ向かって歩いていくのが見えた。」 と、説明されている。



結果

作品の根本から、三遊亭の落語までの間に話しの内容が大きく変化した事はないが、三遊亭の落語において、牡丹灯籠が、「怪談」話しに変化せれている事が大きな変化であることがわかる。 芳年画において、芳年自体が三遊亭との関わりが深い事もあり、三遊亭の「怪談牡丹灯籠」に影響されている事は間違いないかと思われる。



その他関連作品

・上田秋成作 『雨月物語』(吉備津の釜)

・狂歌百物語 『札返し』

・四代目鶴屋南北 『阿国御前化粧鏡』 脚本

その他、三遊亭円朝の作品内容で、歌舞伎や人形劇などが上演される。



国周の作品

[3]

国周の牡丹灯籠では、描かれている場面は同じであるが、芳年の作品とは、違う点が多い事がわかる。

・相違点

①灯篭を持っているのがお露とお米ふたりともである。 ②お米とお露の年の差が芳年に比べてはっきりしていない。

国周の作品は、歌舞伎そのものを描いているが、芳年の作品は、三遊亭から直接話しを聞いての、そこから芳年が想像するお米とお露なのであろうか。



まとめ

今回の作品は、特に芳年と国周の作品が代表的な作品である。牡丹灯籠であろう作品は、芳年の作品と国周の作品では、上記であげた相違点以外にもたくさんの違いがみられる。 牡丹灯籠において、一体どのような作品のイメージを芳年は感じていたのか。 芳年の作品と三遊亭の関係が一体どのようなものなのかなど、調べなければならないたくさんの課題が残されている。




参考文献

・明治の古典1『怪談牡丹灯籠』学研 1982.9.22

・中国古典小説選8『剪燈新話〈明代〉』明治書院 2008.4.10

・教育社新書59 『伽婢子』教育社 1666

・人形劇『牡丹灯籠』三一書房 1981.8.31

・『名作歌舞伎全集 第17巻 江戸世話狂言集3』東京創元社 昭和16.3.10

・日本怪談大全 第二巻 『幽霊の館』国書刊会 1995.8.2

・『牡丹灯記の系譜』㈱勉誠社

・日本古典文庫20 『雨月物語』河出書房新社 昭和63.4.5