雲雀山

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ひばりやま


画題

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解説

東洋画題綜覧

雲雀山は紀伊国有田郡糸鹿山の東北の山で(一説には大和国宇陀郡日張山ともいふ)中将姫の継母のために隠れた所、謡曲雲雀山は即ち、このことを綴つたもの、元清の作で、シテが侍従、子方中将姫、男、従者、ワキ横佩右大臣、トモ従者、庭は大和となつてゐる。一節を引く。

「さるにても、馴れしまゝにていつしかに、「今は昔に奈良坂や、このて柏の二面、兎にも角にも故郷の、よそめになりて葛城や、高間の山の嶺つゞき、ここに紀の路の境なる、雲雀山に隠れ居て、霞の網にかゝり、目路もなき谷陰の、鵙の草ぐきならぬ身の、露に置かれ雨に打たれ、斯くても消えやらぬ、御身の果ぞいたはしき、「遠近の「たづきも知らぬ山中に、おぼつかなくも呼ぶ鳥の、雲雀山にや待ち給ふらん、いざや帰らん「やあ如何に御事は乳母の侍従にてはなきか、豊成をば見忘れてあるか、扨も我姫よしなき者の讒奏により、失ひしかども、科なき由を聞き後悔すれども叶はず、まことや御事がはからひとして此雲雀山の谷陰に、柴の庵を結び隠し置きたるとは聞きしかども、誠しからぬ所に、今御事を見てこそ扨はと思へ、姫は何処にあるぞ、包まず申し候へ、「是は仰せとも覚えぬものかな、人のかごとを御用ひありて、失ひ給ひし中将姫の、何しに此世にましますべき、如何に御尋ねありとても、「今は御身も夏草の、茂みに交じる姫百合の、知られぬ御身なり、何をか尋ね給ふらん、「実に/\それはさる事なれども、先非を悔ゆる父が心涙の色にも見ゆらん物を、はや有りどころを申すべし「まこと左様に思し召すか、「中々諸天氏の神も、正に照覧あるべきなり、さらば此方へ御出あれと、共処とも知らぬ雲雀山の、草木を分けて谷陰の栞を道に足引の、山ふところの空木に、草を結び草を敷きて、四鳥の塒に親と子の思はず帰り逢ひながら、互に見忘れて唯泣くのみの心かな。

三井万里筆  『雲雀山』  第十回文展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)


ちゅうじょうひめ「中将姫」の項を見よ。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)