複式能(二場物)

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能の曲の中で、前場まえばぜんば(曲の前半部分)に登場したシテ(前シテまえして)が退場し、後場のちばごば(曲の後半部分)に新たにシテ(後シテのちして)が再登場する構造を持った能を複式能ふくしきのう、または二場物にばものと呼ぶ。

前場・中入なかいり・後場という時間構成を持ち、中入には間狂言あいきょうげんが演じられる。したがって厳密に言えば三場構成であるが、中入の間狂言は一つの場として数えられないため、「二場物」と呼ばれている。複式能の例として、《敦盛あつもり》・《天鼓てんこ》などが挙げられる。

複式能に対して、一場で構成される能を、「単式能たんしきのう」または「一場物いちばもの」と呼ぶ。

なお、能では、前場・中入・後場以上の場面を持つ作品(シテが三回以上舞台に登退場するもの)の例はない。

複式能の中で最も多い形態は、ある出物でもの(人物や鬼神)が前場ではそれとわからぬ姿で登場し、後場にそれがはっきりとわかる姿で再登場するものである。たとえば《敦盛あつもり》がそれに当たる。《敦盛》の前シテ「草刈男くさかりおとこ」と後シテの「平敦盛たいらのあつもり」は、どちらも平敦盛の幽霊であり、それが別の姿で現れたものである。中入にはアイあいの里人による「間語リあいがたり」がある。この《敦盛》のように、後場に幽霊が生前の、古典文学において有名な姿で現れるような形式を、特に複式夢幻能ふくしきむげんのうと呼ぶ。

また、《天鼓てんこ》では、前場に前シテ王伯おうはくが登場し、後場には王伯とは別人物の後シテ天鼓が登場するが、やはりこれも複式夢幻能の一種であり、中入にはアイの勅使ちょくしの従者が登場して「立シャベリたちしゃべり」や「触レふれ」を演じる。また、複式能では、シテだけでなくワキわきも中入で退場することがある。たとえば《土蜘蛛つちぐも》のワキは独武者ひとりむしゃであるが、後場では武装した姿で再登場する。