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すみれ


画題

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解説

東洋画題綜覧

菫は菫科に属する小草で、春の野草として紫雲英蒲公英と共によく知られてゐる、漢名では『紫花地丁』、『苦菫』、『苦葵』、『菫菜』など、方言や異名には、『三国草』、『かくれ簑』、『ひとよぐさ』、『箭頭草』、『すまひ草』などがある、世界中に菫科に属する植物は三百五十余あるといふ、日本に産するものだけでも五十余種に及んでゐる。

普通に菫と呼んでゐるのは濃紫色の花で、葉は長楕円形で、粗い鋸歯があり、花は一本の花梗に一輪づゝ咲く、併し紫のみでなく菫には瑠璃色があり、薄紫があり、紅紫色のもの、白色のもの、又黄色のものもあり、葉も亦、長葉あり、円葉あり、掌状葉があり、枝を分つもの、分たぬもの、実に千態万状である、中で壷菫といふのは、主として葉の形が心臓形で、この種の中には特に香気の高いものがあり、匂ひ立菫と称せられ、珍重されてゐる、此のたち菫といふのは、茎が立つて枝を分つもので、その大きなものになると一尺位になるものがあり、花は淡紫色、葉は三角状披針形である、此の細葉の種類に対し、円味を帯びてゐるのが円葉菫であり、此の中にも毛円葉などと呼んで細い毛の生へたものなどがある、黄色の花の咲くのは山地にある黄菫、大葉黄菫、高嶺菫、黄花駒の爪などあり、高山植物として知られ、紅紫色のものにはあかね菫がある、この外いろ/\あり、菫の名を冠する食虫植物に虫取菫があり、これによく似て二輪一花梗に咲くのが庚申草である。

春日野にすみれ摘まむと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にける  (万葉集)

つばなぬくあさちが原のつぼすみれ今さかりにもしげきわが恋   (万葉集)

菫は小さい花だけに此花を主として画いたものは小品の外に無いが、抱一の『四季草花絵巻』や南岳の『草花絵巻』宗達の『花卉図』などには、よく画かれ此の外、春の野の花を画いた作として菫を加へたものなどは枚挙に遑もない。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)