うしろをつける
舞台で演技中の俳優に蔭からセリフを教えることをいう。歌舞伎では狂言方の担当で、黒衣(くろえ)を着て台本を持ち、物蔭に居たり俳優の後にいて、小声でセリフをつける。これはなかなか技術の要する仕事で、その俳優によく分り、しかも観客の邪魔にならぬことが必要、またその俳優の調子やクセを十分のみこみ、セリフの記憶の程度を知っていないと演技を阻害してしまう。江戸時代では初日より三日間がきまりで、あとは俳優が狂言方に特に依頼せねばならなかった。