大堰川船遊

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おおいがわふなあそび


画題

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解説

東洋画題綜覧

『古今著聞集』巻五に載せられた御堂関白藤原道長が豪華を極めた船遊の風流を図したるもの、原文には大井川とあるが、今の大堰川で、大堰川は嵐山の下を流るゝ川である。

御堂関白、大井川にて遊覧し給ふ時、詩歌の船をわかちて、各堪能の人々をのせられけるに、四条大納言に仰せられていはく、『いづれの舟に乗るべきぞや』と、大納言いはく、『和歌の舟にのるベし』とて乗られける、さてよめる

朝まだきあらしのやまのさむければちるもみぢ葉をきぬ人ぞなき

後にいはれけるは、『いづれの舟に乗るべきぞと仰せられしぞ、心おごりせられしが、詩の舟に乗りて、是程の詩をつくりたらましかば名をあげてまし』と後悔せられけり、この歌、花山院、拾遺集をえらばせ給ふ時紅葉の錦とかへて入るべきよし仰せられけるに、大納言しかるべからざるよし申されければ、もとのままにて入れにけり。

大堰川船遊のこと、同書にはなほ

円融院大井川逍遥の時、三つの舟に乗るものありけり、帥民部卿経信卿、又この人に劣らざりけり、白河院西河に行幸の時、詩歌管絃の三つの舟をうかべて、その道の人々を分ちてのせられけるに、経信卿遅参の間、殊の外に御気色あしかりけるに、とばかり待たれて参りけるが、三事かねたる人にて汀に跪きて『やゝいづれの舟にてもよせ候へ』といはれたりける、時にとりていみじかりける、かくいはむ料に遅参せられけるとぞ、さて管絃の舟に乗りて詩歌を献ぜられたりけり、三舟に乗るとはこれなり。

後者には別に『経信三船』と題してゐる、これを画いてゐるもの左の作がある。

宇喜多一蕙筆  『経信三船』  京都泉涌寺蔵

冷泉為恭筆           有賀長文氏旧蔵

松岡映丘筆           秋田本郷家旧蔵

花田義方筆   『三船御遊』  第六回文展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)