善知鳥

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うとう


画題

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解説

東洋画題綜覧

善知鳥は中形の海鳥で、各地の海岸で目撃せらるゝこと多いのみならず、謡曲中に取扱はれ人口に膾炙されてゐる、羽色は背面は一様に黒褐色で頭部には眼の上、後、及口角より後方に向ひ白色細長なる飾羽を叢生す、体の下面は腮から上胸迄は灰褐色を呈し以下は帯灰白色である、嘴は橙黄色で口角は白く蕃殖季節には上嘴基部に上方に突出した瘤様突起があり、脚は黄白色で跗蹠の後面黒色である、我が国では樺太千島北海道青森等の沿岸諸島嶼に蕃殖し冬は本州四国九州の沿岸にも渡来する。  (日本動物図鑑)

善知鳥を画いたものはあまり無いが柳里恭がこれを画いてゐる。

謡曲の『善知鳥』は有名な曲である、此の鳥、母性愛深く、浜辺に産卵し、その卵の孵る頃、親なる鳥が『うとふ』と呼べば、雛は『やすかた』と答へて親を慕ふといふ伝説を骨子に、陸奥に下る僧が途中越中立山に詣で、猟師の亡霊に出あひ外か浜に遺る妻子へと形見の簑笠と片袖を托され、やがてこれを妻子に届ける、妻子が念仏を唱へると猟師の霊が現はれ、生前鳥を殺した報いにより地獄の怪鳥に苦しめられる有様を語り僧の助けを求めるといふ節、元清の作でシテは猟師幽霊、ツレは妻、子方幼児、ワキ旅僧である。

「中に無慙やな此鳥の、「愚かなるかな筑波嶺の木々の梢にも羽を敷き、波の浮巣をもかけよかし、平砂に子を生みて落雁の、はかなや親は隠すとすれど、うとふと呼ばれて、子はやすかたと答へけり、扨てぞ取られやすかた、「うとふ、「親は空にて血の涙を、降らせば濡れじと菅簑や、空を傾けこゝかしこの、便を求めて隠笠隠簑にもあらざれば、猶降りかゝる血の涙に、目も紅に染み渡るは、紅葉の橋か鵲か。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)