• 目次

A00 京大絵図

 近世期に出版された京都図は、17世紀後半から、当時の需要との関わりの中で、観光案内図としての機能を充実させる方向性が強くなる。ちょうど、17世紀後半から18世紀半ばの時期に活躍した有名な版元に林吉永がいる。ここに展示した『新撰増補京大絵図』は、その代表的な地図で、京都の名所案内的な地誌情報が豊富に盛り込まれており、京都の出版図の歴史において、画期的な地図であった。まず、従来の地図にはない、横121.8cm、縦161.8cmという大型の版型であること、従来のように街区を黒く刷り出していないことが、その特徴として挙げられる。すでに一般的な出版様式であった木版手彩色であることは、従前と同様であるが、緑・赤・黄を用いた彩色が明るく華やかである。また、洛外の表現で大きく異なっているのが山であり、すべての山が基本的に南から北に臨んだ形で表現されていた従来の地図と比較して、本図は市街から周囲の山々をみた方向に表現されている。こうした大絵図は、おそらく室内で畳の上に広げて見たものと思われる。詳細な町名・通り名の入った大絵図は、室内での場所の確認や京の話の資料として非常にふさわしいものであった。