高倉院

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たかくらいん


画題

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解説

東洋画題綜覧

高倉天皇は人皇八十代に在す、賢聖仁徳、その幼時より紅葉を愛させ給ひ、仁和寺の守覚法親王献ずる処の紅葉を仕丁の焼いて酒を煖めたのをお咎めもなく、白氏文集を引いて風流を愛させ給うたこと、『源平盛衰記』にあり又、謡曲『紅葉』の一番に作られてゐる、『盛衰記』の一節を引く

或時信成物詣でとて出たりける跡に、田舎より仕丁の二三人上たりけるが、寒を禦がん為に酒を尋出し、あたゝめ飲んとしけるに、焼物のなかりければ御所の内を走廻つて尋る程に、坪の乾泉水の紅葉を尋得て、散々に折焼て酒をあたゝめて飲てけり、実に片田舎の者なれば、争か紅葉のやさしき事をも可知なければ角振舞たりける也、信成下向し給て、先さし入紅葉を見給うに跡形なし、よく/\尋問給ひければしか/゙\と申、信成手をはたと打てこはいかにしつる事ぞ、如何なる御勘気にかあらんとて、彼仕丁を尋出し、縫殿の陣に誡置。御所より信成は下向歟、此両三日紅葉を御覧ぜねば御恋に思召急ぎ持参せよ叡覧せんと御使あり、信成周章参りて此由を奏聞せらる所院やゝ御返事なし、去ばこそ大なる御不審蒙なんず、如何様にも廷尉に被下馬部吉祥に仰て禁獄流罪にもやと、恐れおののき居給たりけり、良有て御返事あり、信成よ歎思ふべきにあらず、唐の大原に白楽天と云へば琴詩酒の三を友として、中にもことに酒を愛して諸に慰みけるに、秋紅葉の比、仙遊寺に遊ぶとて紅葉を焼て酒をあたゝめ、緑の苔を払て詩を作けり、即其心を

林間煖酒焼紅葉、石上題詩払緑苔

と書遺し給へり、かほどの事をば浅増き下臈に誰教へけん、最やさしくこそ仕たりけれと、叡感に預りける上は仔細に及ばず、あやしの賎男賎女までも、角御情を懸させ給ければ、此君千秋万歳とぞ祈申ける。

此の御逸事は大和絵の好画題として画かれてゐる。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)