菅原伝授手習鑑

提供: ArtWiki
移動: 案内検索

すがわらでんじゅてならいかがみ Sugawaradenju tenaraikagami


総合


歌舞伎

浄瑠璃、五段、時代物竹田出雲三好松洛並木千柳らの合作。1746年(延享3)8月 大坂竹本座初演。同じ年、9月には京都中村喜世三郎座で歌舞伎化。8月21日から10月25日まで2ヵ月に亙る興行。初演当時、大坂で評判になっていた三つ子の誕生を当込んだもの。同年10月には京都浅尾座で歌舞伎化、延享4年2月18日からは江戸豊竹肥前座で上演。同年、5月には、中村・市村両座で歌舞伎競演。同年8月大坂中の芝居で歌舞伎。 近松の「天神記」を基に、伝説俗説を取入れて趣向をこらし、作者二人がそれぞれ親子の三様の別れを競作したもの。菅原道真(菅丞相)と藤原時平との政争を題材にし、松王・梅王・桜丸の三つ子の活躍を配置した。三人の作者が二段目「道明寺」で苅屋姫と菅丞相との、三段目「佐太村」で桜丸と白太夫との、四段目「寺子屋」で小太郎と松王との別れをそれぞれに書き較べたものという。 「義経千本桜」、「仮名手本忠臣蔵」と共に、浄瑠璃の三大傑作の一つに数えられる。 今日では二段日の切「道明寺」、三段目の口「車引」、切「賀の祝」「四段日の切「寺子屋」が主に上演される。 松王は「もどり」の手法の代表的な役。歌舞伎の「寺子屋」には、代々の名優によるすぐれた演出の数々がのこっている。

概要

 斎世親王と菅原道真の娘苅屋姫の恋を道真の舎人で三つ子の末子桜丸がとりもったことに起因して、道真は政敵藤原時平に陥れられ、筑紫に流罪が決る。桜丸と梅王が吉田神社に参詣の折、時平の乗った車が来掛り、松王と争いになるが時平の威におされる。兄弟の父白太夫の七十の賀の祝に、桜丸は責を負って切腹。道真は、時平の逆心を知り、筑紫の天拝山から雷神となって都へ飛翔する。  道真の一子菅秀才は、父の弟子武部源蔵の寺子屋に匿われている。時平の討手が迫り、源蔵はやむなく新しく寺入りした子を身代りにする。松王が首実検に来、菅秀才の首と断定した。しかし、が、この首は松王丸の一子小太郎であり、松王丸はその苦衷を吐露する。   桜丸の霊は時平を滅ぼし、菅秀才は菅家を目出度く相続する。

人物関係図

あらすじ

<初段>

(大内の段)延喜帝の御世、左大臣藤原時平は、反逆心を抱いており、右大臣菅原道真(菅丞相)が邪魔になる。渤海国から僧天蘭敬が渡来し、天皇の絵姿を写したいと願出る。時平は、自分の姿を天皇として描かせようとし、道真に諌められ、齋世親王を天皇として描かせる。道真には、筆道の奥義を弟子に伝授するようにとの勅命が下る。 (加茂堤の段)天皇の病気平癒のため加茂明神へ参詣してきた時世親王。菅丞相の娘苅屋姫は、舎人桜丸と女房八重の仲介で、車の中で親王と密会する。時平の家来、三好清貫が車の中を改めようとするが、桜丸が追散らす。二人は、恥ずかしさから姿を消し、桜丸が二人を追う。八重は夫の白張をつけ空の牛車を引いて帰る。 (筆法伝授の段)菅丞相の弟子左中弁希世は筆法伝授を願うが、菅丞相は、武部源蔵に筆法を授ける。大内からはにわかのお召しで、菅丞相の冠が落ち不吉の前兆となる。 (築地の段)菅丞相は、苅屋姫と斎世親王の一件により謀叛を言い立てられ、丞相は遠島、邸内に押し込められる。源蔵夫婦は、梅王と計り、菅丞相の一子菅秀才を密かに連れ去る。

<二段目>

(道行詞の甘替)苅屋姫と斎世親王に追いついた桜丸は、飴売りに身をやつし、二人を荷箱の中に隠して、旅を続けている。その道中で菅丞相の流罪を知り、津の国安井へと向かう。 (安井汐待の段)菅丞相は、九州へおもむくことになり、安井の浜で船出の風待ちをしている。桜丸が追付き、二人を菅丞相に会わせようとするが許されない。判官代輝国の情けで、丞相は、河内国土師の里の伯母覚寿のもとへ立寄ることが許される。苅屋姫はそこで菅丞相に会うことになり、一方親王は桜丸を伴い、都の法皇の許へ急ぐ。 (杖折檻の段)覚寿は、菅丞相への義理から苅屋姫を杖で折檻する。一間からは、それを止める菅丞相の声がかかる。しかし、襖の向こうには、菅丞相の自作の木像があるのみであった。 (東天紅の段)苅屋姫の姉、立田前の夫、宿祢太郎とその父土師兵衛は、時平方に一味しており、菅丞相を殺すため、偽迎いで連出そうとたくらんでいる。一番鶏を合図に迎えがくることを利用し、鶏を早く鳴かせようするが、立田前に知られ、立田を殺して池に沈める。 (「道明寺」丞相名残の段)偽迎えによって、菅丞相は連れ去られた。立田の死骸があがり、その口に咥えられた宿祢太郎の下着の褄先から犯人が知れ、覚寿は太郎を刺す。そこへ、本物の輝国が菅丞相を迎えに来て、土師兵衛も輝国によって成敗される。しかし、偽迎えの連れ去ったのは、木像であった。菅丞相は、覚寿と姫との名残を惜しみつつ去っていく。

<三段>

(車曳の段)三つ子の兄弟のうち、松王丸は時平に、梅王丸は菅丞相に、そして桜丸は斎世親王に仕えている。梅王と桜丸が吉田神社辺りで出会い、互いに不運を歎いている。そこへ時平の行列が通りかかり、両人は、時平の牛車を止めにかかり、松王と喧嘩になる。しかし、牛車から現れた時平の威光に梅王・桜丸とも圧倒され、父の七十の賀まで勝負はお預けになる。 (佐太村の段)三つ子の兄弟の父、四郎九郎は佐太村の丞相下屋敷に住んでいる。今日は、七十の賀ということで白太夫と改名し、三つ子のそれぞれの嫁、春、千代、八重も来ている。白太夫が八重を連れて、氏神詣でに出かけると、そこに松王と梅王がやってきて、喧嘩となり、桜の木を折ってしまう。帰ってきた白太夫に松王は勘当を、梅王は、筑紫の配所で丞相に仕えることを願出る。白太夫は、松王は勘当するが、梅王は、御台の安否も知らずにいることをなじり、願いは聞入れない。松王・梅王の夫婦は追い出される。八重がひとり残され、夫の桜丸を案じていると、納戸から桜丸が現れ、切腹する。八重も死のうとするが梅王夫婦が駆けつけて止める。白太夫は、あとのことを梅王らに託して、筑紫へ出立する。

<四段>

(天拝山の段)菅丞相は霊夢によって、愛樹の梅が一夜のうちに筑紫へ移ったのに驚く。梅王が時平方の刺客鷲塚平馬を捕らえてやってくる。鷲塚から時平の謀叛を知り、鷲塚を殺して、生きながら雷神となり、天拝山の山頂から都へ飛び去る。 (北嵯峨の段)菅丞相の御台は、梅王の妻春と桜丸の妻八重に守られ北嵯峨に隠棲している。春が外に出たすきに時平方が押入り、八重は奮戦するが殺され、御台は山伏に連れ去られる。 (寺子屋の段)武部源蔵夫婦は、寺子屋を開き、菅秀才を養っているが、時平方に知られて首を差出すことを命じられる。源蔵は、帰宅してその日に寺入りした小太郎を身代りにすることを決意し、検分に来た春藤玄蕃と松王丸にその首を差出す。松王丸が実検の上、菅秀才の首と判定し、玄蕃は帰っていく。夫婦は身代りがなったことを喜ぶが、そこへ松王丸夫婦が戻ってきて、小太郎は自分たちの子であり、身代りのために寺入りさせたと明かす。密かに連出した御台と菅秀才を対面させる。白無垢になった松王夫婦は、我が子の野辺送りをする。

<五段>

(大内天変の段)都では菅丞相の雷神が荒狂い天変が続いている。時平一味は落雷により一掃され、桜丸夫婦の幽霊になやまされていた時平は、苅屋姫・菅秀才に殺される。菅秀才は菅家を相続し、菅丞相は、天神として祀られる。