戻橋背御摂

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もどりばしせなにごひいき (Modoribashi senani gohiiki)


総合


歌舞伎

初演

  • 「戻橋背御摂」(もどりばしせなにごひいき)は、文化10(1813)年11月13日より市村座初演。4世鶴屋南北作。
  • 11月29日夜、高砂町から出火し中村座と市村座が類焼する。市村座の役者は森田座へ移り、閏月を利用して、森田座の顔見世御贔屓繋馬」と「戻橋背御摂」とを打ち交ぜた「戻橋閏顔鏡」を興行。三立目(花山院古御所の場)、五立目、六立目、大詰、二番目大切は、若干配役を変更しつつも、そのまま上演した。
  • <7>市川団十郎はこの興行で初めて座頭を勤めた。団十郎の初座頭を言祝ぐセリフが台帳の随所に見られる。
宇佐 今までの市川とは、違つて今度の顔みせには、世に成田屋の師匠もはつの座頭かぶ(一番目三立目)
髭黒 待て/\、いつもの暫より、一きわまさる勢ひ。よく/\見りやア馴染のわつぱし。今年はお江戸八十(マヽ)八町の、おゆるし受けた座頭かぶ、七代目の貞光だな。(一番目三立目)
保輔 サア、御上使の化けそこなひ。今年初めて座頭も、まだ赤つ子の事なれど、お江戸随一御ひいきを、頭にかむつた金かんむり(中略)新板替つた今年の顔見世、ひつくり返していづれもさま、あいつを一番しめてお目にかけませふ。まつぴら御免下されませふ。(一番目六立目)
  • <2>岩井粂三郎が文化9(1812)年11月に名題昇進して以降、初めて親の<5>岩井半四郎と同座した興行である。そのため二番目序幕にお綱(半四郎)が三日月お仙(粂三郎)に作法を教える伝授の場が設けられている。

配役

猟師深山の五郎蔵実ハ卜部の季武<2>関三十郎
頼光弟美女丸実ハ保昌娘小式部<2>岩井粂三郎
三日月お仙実ハ純友息女九重姫<2>岩井粂三郎
大宅太郎<2>関三十郎
快童丸<1>岩井松之助
袴垂保輔<5>松本幸四郎
茨城屋鬼七五郎実ハ伊賀寿太郎<5>松本幸四郎
山賎実ハ鬼同丸<5>松本幸四郎
将門娘七綾姫<5>岩井半四郎
鬼七女房お綱実ハ純友侍女苫屋<5>岩井半四郎
頼光侍女此糸<5>岩井半四郎
山姥<5>岩井半四郎
碓井貞光<7>市川団十郎
二の瀬源六<7>市川団十郎
酒蒸のおよし<7>市川団十郎
将軍太郎良門<7>市川団十郎
海老ざこの十実ハ渡辺綱<7>市川団十郎
源頼光<7>市川団十郎
山賎実ハ三田仕<7>市川団十郎

上演資料

役割番付 絵本番付

台帳

  • 『大南北全集』第3巻(1925、春陽堂)
  • 『日本戯曲全集』第13巻(1929、春陽堂)
  • 『鶴屋南北全集』第5巻(1971、三一書房)※底本は国会図書館所蔵本

役者絵

立命館大学アート・リサーチセンター浮世絵検索閲覧システム 演劇博物館所蔵浮世絵閲覧システム

あらすじ

<一番目三建目 諸羽社の場> 源頼信は、帝位をうかがう髭黒公から神璽を奪い返すため、髭黒公に取り入っている。髭黒は、頼信と恋仲である常俊卿の娘鶴の前を后に望んでいる。源家の重宝蜘切丸と相馬の重宝蜘蛛の一巻が、盗賊袴垂保輔に与する平正盛の一味の手に落ちる。相馬の旗が虚空に飛び去る。 <一番目三建目引き返し しばらくの場、花山古御所無言の場> 諸羽社では満仲らが髭黒を諫めている。髭黒は鶴の前が意に従わないため首を打とうとするが、貞光が「しばらく」と声をかける。貞光は髭黒から神璽と常俊卿の家宝雄竜の印を取り返し、仕丁らの首をなで切りにする。 花山院の古御所では、辻風が袴垂に蜘蛛の一巻を渡そうとするが、蜘切丸を所持する忠正に奪われる。蜘蛛が現れ忠正の首を打ち落とす。経櫃から袴垂、床下から良門、御簾の内から七綾姫が現れ、三人のだんまりとなり、一巻は七綾、蜘切丸の鞘は袴垂、白刃は良門の手に渡る。 <一番目四建目 いく野海道追分の場、笛吹峠畚おろしの場> 源家の重宝鬼切丸を手に入れた丹波太郎は、鶴の前から雄竜の印を奪おうとする。関屋が雄竜の印を以て谷底に落ちる。二の瀬源六と御厨七郎俊連が畚で谷底へ降り、照葉の鏡と雄竜の印を争い、雄竜の印は俊連に、照葉の鏡は源六の手に渡る。 <一番目四建目返し 栗の木村の場> 源家を裏切った海上刑部太郎は、栗の木村で木村又次と名を変えて住居している。娘お浦は俊連と夫婦の固めをしようと、源六に仲人を依頼し、俊連と源六は顔を合わせて驚く。又次は、頼光に通じる俊連を害そうとするが、お浦に切られる。源六と俊連は雄竜の印を鶴の前へ返し、お浦から入手した相馬の白旗を頼光へ渡そうとする。 <一番目五建目 市原野の場> 鬼切丸を奪った雲助と頼光の足軽は非人の焚き火で体を暖める。非人の追いはぎにあった二人は鬼切丸と足軽の刀を取り違える。非人およしはつゞれの次郎と盗みの相談をして頼光の館に向かう。大宅太郎が来ておよしとすれ違い、次郎と立てになる。 <一番目六建目 摂津介頼光館の場> 保輔は偽上使となり、七綾も田舎娘となり頼光の館へ忍ぶ。およしも煙草売となって忍び入るが、保輔に切られる。良門も上使と偽って頼光館に参上する。良門は保輔に見顕され、七綾姫の蜘蛛の妖術は大宅太郎が切腹した血の穢で破られる。 <一番目六建目大詰 隅田堤の場> 隅田堤の屋形船で海老ざこの十と鬼七女房お綱が過ごしている。医者道庵は飛脚から満仲所持の尊像を奪うが、木箱が川へ落ち、蓋を十が拾う。様子を鬼七がうかがっている。 <二番目序幕 羅生門河岸切見世の場> 道庵は尊像から指が離れなくなり、お綱に手首を切り落とされる。十は切見世に来て、お仙を身請けしようとするが鬼七に断られ、お綱を所望する。鬼七が了承すると十は外へ出て上下姿となり、渡辺綱と身を明かす。鬼七は純友の身内伊賀寿太郎、お綱は純友の侍女苫屋、お仙は苫屋の娘九重姫と打ち明ける。綱は尊像を受け取り、太郎らを見逃す。 <二番目大切 浄瑠璃「親子連枝鴬」常磐津> 頼光の下向中、夜叉太郎が馬方に姿を変えて頼光の命を狙うが、賤女紅梅・白梅がこれを阻止する。足柄山では山姥が一子快童丸を育てている。山賤二人(三田仕・鬼同丸)は快童丸の怪力を見て、それぞれ自分の味方にしようとする。仕は鬼同丸を縛り、山姥は仕に快童丸を託して姿を消す。

脚注

引用は『鶴屋南北全集』による。 1に同じ。 1に同じ。 文化10年正月刊『役者出世噺』に「森田座にて八百やお七此狂言の仕うちは一子相伝其侭生の写し 大あたり/\ 当かほみせより初名代結構/\」とある。

参考文献

  1. 『大南北全集』第3巻(1925、春陽堂)
  2. 『日本戯曲全集』第13巻(1929、春陽堂)
  3. 『鶴屋南北全集』第5巻(1971、三一書房)
  4. 『戻橋背御摂』(国立劇場上演資料集173、1980、国立劇場芸能調査室)