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6・謡本から見る舞台

六―1

観世流謡本

元禄九年

川勝五郎右衛門刊

味方健氏蔵

 詞章と節付だけでなく、謡い方の注意、登場諸役の装束付などの注を入れて、一般の読者にもわかりやすく示したいわゆる「頭註付謡本」。
  元禄年間 (一六八八―一七〇四) からこのような本が現れる。展示箇所は《梅枝》の冒頭の丁。「梅か え」という曲名の下に「位序」(静かな位で謡うという意味)、その下に「摂津」 (国別といい、摂津国〔現在の大阪府〕を舞台にした曲という意味)と注が入れてある。詞章の上部には、「始ヨリ作リ物出ル。脇僧、白衣水衣」と、舞台上に出す作リ物(大道具の類)と、登場する役の種類、 出立(扮装)が、頭注形式で示される。

六―2

下掛り拾遺大成謡

正徳四年(一七一四)
弥生

谷口七郎右衛門刊

味方健氏蔵

 六―1と同様、一般の読者にわかりやすい注を入れたもので、観世流ではなく下掛り系の本。展示したのは、《大会》の中程の丁である。本文五行目に、「作り物、角帽子 大?見 赤頭 頭巾 狩衣大口 腰帯 経 羽団」と、作リ物(大道具の類)を舞台上に出すことと、ここで登場する天狗の出立(扮装) と持ち物(「経」)が示される。

六―3

千秋小謡万歳楽

天保十二年
(一八四一)

河内屋喜一兵衛

赤間亮氏蔵

 観世流の小謡(短い謡い物、完曲の一部)を集めた謡本で、糸屋市兵衛が上梓した本の河内屋による求板後印本。
 種々の小謡の上に別の欄を作り、そこに能楽を多 角的に知ることができるような情報を盛り込んで いる。展示箇所には、能面の種類、装束の烏帽子の種類、作リ物(舞台に出す大道具の類)が示されている。一般向けの能楽ハンドブック的な性格を持つ本である。なお、本書には、袋と思われる見返しを含め、前後に色摺丁が加えられている。

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