茶
ちゃ
画題
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解説
東洋画題綜覧
茶は山茶科に属する常緑灌木で、その葉を採つて飲料に製せられることは、洽く知られてゐる所である、一名『めざましぐさ』又草人木ともいふ、その原産地は東印度のアツサム及カチヤル地方でそれが支那に分布し更に我が国に将来せられたものである、高さは三尺から六七尺に至り葉は楕円形で鋸歯があり、花は白色五弁で十一月頃咲く、中央には多くの雄蕊と一本の雌蕊あること山茶花に同じ、五月上中旬頃から嫩葉を摘みこれを蒸し焙炉にかけて茶を造る、山城宇治、駿河の安倍、武蔵の狭山は古来聞えた産地である、支那では喫茶のことも古から行はれ唐の陸羽がこれを創めたといひ、『茶経』の著あり、日本に於ては桓武天皇の延暦二十四年僧最澄が唐より持帰り比叡山麓坂本に栽ゑたのを初めとし嵯峨天皇の弘仁六年、天皇近江の韓崎に行幸の砌、程近い梵釈寺にわたらせ給ふた時、大僧都永忠が手づから茶を煮じて奉つた処天皇いたく御嘉賞あり、五畿をはじめ、近江、丹波、播磨などに植ゑしめ給ふたこと伝へられ、其後、後鳥羽天皇の建久二年栄西禅師が宋から帰朝の際、茶を齎らし肥前の背振山に栽ゑたのが、茶樹栽培のはじめであるといふ。
冬の花の少い時に、茶の花が清楚な姿して咲いてゐるのは風情があるので花鳥画の好画材となり、又、茶畑のさまも面白いので、近頃よく画かれる。
茶 頼山陽
採時宜及旗槍際、煮候当論老嫩回、是愛風炉火紅処、恍聞蝉語過秋山。
松岡映丘筆 『富嶽茶園』 帝室御収蔵
落合朗風筆 『茶郷二題』 第一回明朗美術聯盟展出品
久岳正義筆 『お茶を干す』 第十四回帝展出品
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)