関の扉

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せきのと


画題

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解説

(分類:戯曲)

東洋画題綜覧

歌舞伎狂言の名、本外題は『重重人重小町桜』であるが常磐津で大詰の名題を『積恋雪関扉』と呼ぶので此の方が聞えてゐる、小野小町、大伴黒主、傾城墨染、桜の精、小野篁、小野頼風などの人物が活躍する七場の通し狂言であるが、今日では大詰の『関の扉』の場丈けが屡々上演される。その常磐津の初句を引く。 待得て今ぞ時にあふ/\、関路をさして急がん、むかし/\往昔噺の其様に、しば/\似たる柴刈も、関屋守る身の片手業、柴を束ねて、かいやり捨て、五尺いよこの手拭、五尺手拭中そめたし、しよんがへ、樵夫の歌も世を厭ふ、身につまされて偲ばしく、忘るゝ心に取敢ず、手馴れし琴を調べける、恨めしや我が縁、はてしほらしい調の音色ぞやな、斯る山路の関の扉に、さしも妙なる爪音を、聞くにつけても身の上を、思ひ出せば錦の帷帳、玉の台に人となり、翡翠の簪飾しなやかに、ある人は初花の雨に綻ぶ化粧とは、女子をのぼす懸詞、今は夫には引替て、草の衣の袖せばき、姿を隠す簑笠や、杖を力にたど/゙\と、関扉近く歩み寄る。 此の劇中々に変化あつて面白く、殊に黒主と桜の精の立廻など劇画としてよく画かれ豊国などの作に現はれてゐる。 (『東洋画題綜覧』金井紫雲)