金崎管絃
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かながききかんげん
画題
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解説
東洋画題綜覧
金ケ崎管絃のこと、『太平記』巻十七に載せられてゐる、曰く。
去る程に百重千重に城を囲みたりつる敵ども一時の謀に破られて、近辺に今は敵といふ者一人もなかりければ、是徒事にあらずとて、城中の人々の悦びあへる事限りなし、十月二十日の曙に、江山雲晴れて漁舟一蓬の月を載せ、帷幕風捲きて貞松千株の花を敷けり、此興都にて未だ御覧ぜられざる風流なれば、逆旅の御心をも慰められんために浦々の船を点ぜられ、竜頭が首に准へて雲中の景をぞ興ぜさせ給ひける、春宮一宮は御琵琶、洞院左衛門督実世卿は琴の役、義貞は横笛、義助は箏の笛、維頼は打物にて蘇合香の三帖万寿楽の破、繁絃急管の声、一唱三嘆の調、融々洩々として正始の音にかなひしかば、天衆も爰に天降り、竜神も納受するほどなり、簫韶九奏すれば鳳舞ひ魚跳る感あり、誠に心なき鱗までも是を感ずることやありけん水中に魚跳り、御船の中へ飛び入りける、実世卿見給ひて、昔周武王八百の諸侯を率し殷の紂を討たんために孟津を渡りし時、白魚跳りて武王の船に入りけり、武王是を取りて天に祭る、果して戦に勝つ事を得しかば殷の世遂に亡して周八百の祚を保てり、今の奇瑞古に同じ、早く是を天に祭りて寿をなすべしと、屠人是を調へて其胙を東宮に奉る、春宮御盃を傾けさせ給ひける時、島寺の袖といひける遊君、御酌に立ちたりけるが、拍子を打ちて翠帳紅閨万事之礼法雖異、舟中波上一生之観会是同と、時の調子の真中を三重にしぼり歌たりければ、儲君儲王忝くも叡感の御心を傾けられ、武将官軍も斉しく嗚咽の袖をぞぬらされける。
『金ケ崎管絃』の作、小堀鞆音に名作がある。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)