C2.3 小説作者が描いた口絵

作品名:『三日月』口絵
判型:合判
作者:村上浪六(著・口絵)
出版:明治24年(1891) 春陽堂
所蔵:立命館ARC(arcUP6796)

 江戸時代においては作者が挿絵や口絵の下絵を描き、画師へ指示を出していたいうことは一般的によく知られているが、近年の研究では、明治時代になってからも小説作者が積極的に絵画へ関わっていたという指摘もある。しかし、ほとんどの場合、小説作者の名前が口絵の画面に記されることはない。そうしたなかで、村上浪六は『三日月』などで、自身の小説に付ける口絵の制作を自ら手掛け、名前を画中に記した。画を専門としない者が手掛けた口絵であるからか、摺刷の特別な技法は用いられておらず、控えめな作品となっている。

【参考文献】
出口智之「明治中期における口絵・挿絵の諸問題:小説作者は絵画にどう関わったか」(湘南文学 (49), pp.129-162, 2014)