C1.3 近代木版口絵の誕生

作品名:『蔦の細道』口絵
作者:村上浪六(著)、富岡永洗(口絵)
判型:合判
出版:明治31年(1898) 青木嵩山堂
所蔵:立命館ARC(arcUP6770)

 明治20年代後半、錦絵の衰退による職人らの仕事激減と、木版再興を図った出版社の動きによって、江戸時代とは異なる口絵「近代木版口絵」が誕生する。同時代においては、活版によって書物の本文頁が印刷されていたため、木版の口絵は別の工程で準備されていた。そのため、江戸時代の見開き型の口絵とは異なり、一枚物の紙に摺られ、二つ折りや三つ折り、十字型に折られた状態で書物に挿し込まれている。登場人物の名前が文字として記されることはほとんどなく、彼らの姿形を表すような一場面が描かれるようになる(本文中に該当場面がないこともある)。構図を工夫して異なる時空間を描くこともあり、書物から切り離された状態でも一目で〈近代木版口絵〉と判断できるような作品も多い。

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【参考文献】
岩切信一郎「近代口絵論:明治期木版口絵の成立」(東京文化短期大学紀要 (20), pp.13-23, 2003)