C1-2 阿野廉子と藤原禧子

『ゑ入 太平記』
判型:大本半裁横本 全21冊第1巻(2冊目)
出版:元禄11年(1698)
所蔵:立命館ARC(藤井永観文庫) 作品番号:eik2-0-66.

【解説】
 『太平記』巻第一の「立后事付三位殿御局事」の章の挿絵である。前半に中宮である藤原禧子について、後半は阿野廉子について書かれている。中宮禧子は、身分が高く大事に育てられたとても美しい女性であるが、政略結婚であるため後醍醐天皇の寵愛を受けらず、帝の訪問も少なかった。一方阿野廉子は、女房であり身分は高くなかったが、一目見て気に入られて特別の寵愛を受けた。そして常に帝の側にいて、機知に富んだ気の利いた話をし、世話をした。それは傾城傾国の乱となるのではと恐れられるほどの寵愛ぶりであったのである。
禧子は右に描かれている女性で、まさに禧子の寂しさや孤独感が感じられる。左に描かれている廉子と帝の仲睦まじい様子が対比して描かれている。(簗.)