C3-3 戦前の楠木久子

教訓名画集』「楠木正行」
編著者:高木義賢 絵師:矢沢弦月 
判型:大判錦絵 出版:昭和12年(1932) 
所蔵:UPS Marega 作品番号:MM0644. 

【解説】
 「教訓名画集」とは戦争直前の昭和12年に出版された画集のことでここに正行母のことが紹介されている。この画集では正行母以外に豊臣秀吉、毛利元就なと偉人の画集が数多く掲載されており、構成としては前半に偉人たちの画集を載せ後半のページにはその偉人達の逸話が掲載されている。この画集にある正行の自害の場面は太平記本文ほぼそのままだが、一部脚色がなされていて正行母が正行に教訓する際に、天皇(後醍醐)に忠義をつくせばお父さんへの孝行になるといっている。このような、脚色があったり画中の解説で正行の戦死を立派だと表現したりしていることから「教訓名画集」は戦前の国民の戦争意欲を煽ることが目的で出版された画集だと考えられる。また本画集の後半には、正行母が幼少時に出くわした兄を殺害しに来た賊方の廻し者に長刀をもって勇敢に立ち向かった逸話が紹介されている。