A1-0 神秘の力...

 日本の神話には、多くの女神が登場する。伊弉冉尊は国を生み、その子天照大神は天を、月読は、海を司るという。そのもっとも代表的な女神、天照大神はたくさんの神々に祭られて太陽神に昇格した「祭られる力」を持つ女性である。
 海神の娘、豊玉毗売は自身の持つ呪力で夫の危機を救い、最終的には八尋和邇という海洋生物となった「変身する力」を持つ女性である。
 乙姫はその物語が人々の手によって幾多のパターンにも変えられた。彼女は
異国に住むひとりの女性にすぎなかったが、竜宮城の統治者にまで昇り詰めることとなった女性である。
 「祭られる力」「変身する力」この二つが神話世界、物語世界に登場する主要な女性たちの持つ「神秘の力」といえる。
 この国での最高神はアマテラスである。しかし、我々がよく知っているアマテラスは元々太陽神に仕える巫女であった。天照大神という名前は男性の太陽神のことを指していた(参考図A1-1 参照:会場展示のみ)。巫女アマテラスは、神話が人々に受容されていく段階で最高神となった。竜宮城という異国の統治者は乙姫だとされ、もはや乙姫の父親である海神は忘れ去られつつある。ここから、日本の神的世界では女性が最高神や統治者として受容されやすいということがわかる。
 近年では、ソーシャルゲームの中でも、日本の神や英雄、あるいは妖怪を登場させている。これは物語の新しい受容のされ方である。そこでは、それぞれのキャラクターがイメージを拡大、あるいは変容して享受されていく。そのルーツを遡るだけでなく、こうした新たな展開を踏まえつつ、その変遷の過程に注目することで、今までと違った魅力を発見することができるであろう。(幡.)