C1-4 大塔宮曦鎧 三位の局
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『小田鴈文台再興』『浮名草紅のべ紙』
上演:文政12年(1829)9月3日 市村座(江戸)
判型:中本
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK03-0094-262.【解説】
この絵は演目の三の口である『大塔宮(おおとうのみや)』である。『大塔宮曦鎧』とも呼ばれ、『太平記』を題材とし、五段目12場で構成されており、後醍醐天皇の皇子大塔宮護良親王の事跡を脚色したものである。中でも全体を通して作中で大きく扱われているのは六波羅の老武士斎藤太郎左衛門である。ストーリーは後醍醐天皇側と六波羅探題との間の位の争いやいざこざから六波羅の討伐、消滅までの過程である。これは浄瑠璃と歌舞伎の両方で上映されているが、話に大きな違いはない。また本作に描かれている場面である三段目の切は「身替り音頭」とも呼ばれ、繰り返し上演されている。二つの場面では、廉子は贈り物に皮肉を込め、好意を利用したり、敵方の武士を罵ったりするなど江戸時代において浄瑠璃、歌舞伎の中で演じられる際にも廉子はあまり性格の良い女性というイメージではなく、どちらかと言うと気の強い悪女という印象を受ける。(簗)この演目では阿野廉子は「三位の局」と称され登場する。三位の局は左右それぞれの場面に描かれている。
右下の絵は三の口と呼ばれる六波羅方である常盤駿河守範貞とその部下の斎藤太郎左衛門の元にやってくる、好意を寄せている相手の三位の局からの返信の使者花園との三位の局の贈り物に関する会話の場面である。この中で三位の局は灯籠と浴衣を送るのだが、これには範貞を拒絶し、まだ後醍醐天皇を想っているという皮肉が込められている。さらにこの贈り物をした上で、帝を隠岐から鳥羽の御所へ移し、若宮を帝に渡したらそちらに行くといっているのだ。
左の絵は三の切と呼ばれる右馬頭とその妻花園が激怒した範貞たちから八歳の宮を守るために、わが子の鶴千代を身代わりにし、さらに二人を盆踊りのために庭に出て音頭に合わせて踊る他の子どもたちに交じって躍らせている場面である。そしてそれを太郎左衛門が見極め刀に手をかけている。ここでの三位の局は、館に乗り込んできた太郎左衛門と右馬頭の睨み合いの中に飛び出し、八歳の宮に扮した鶴千代を庭に逃がし太郎左衛門に対し自分に仕えていた娘の早咲はその夫の土岐頼員の結婚を許してあげた恩を忘れず帝側についたというのに親の恩を忘れたのかと歎いて責めている。ここから、廉子の我が子を救いたいと思う母としての一面と太郎左衛門に恩知らずであると罵る激しい性格が描かれている。【参考文献】
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「歌舞伎台帳集成 第三巻」https://www.dh-jac.net/db1/mbooks/results1024.php?f1=BN00278942-03&f12=1&f39=03%2F000&enter=pdf&max=1&skip=30&enter=pdf# 閲覧日12月7日 p,31-40
「浄瑠璃作品要説 4《竹田出雲篇」https://www.dh-jac.net/db1/mbooks/results1024.php?f1=BN00284071-04&f12=1&f39=04%2F000&enter=pdf&max=1&skip=12&enter=pdf 閲覧日12月7日 p.13-22 -