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担当:藤田恵梨子
日 時: 2025年10月17日(月)14:00〜17:00
場 所: 福井県越前市 MI-LAB(国際木版画アーティスト・イン・レジデンス)
研修6日目の10月17日は午前中に美濃を出発して越前に移動し、午後から摺りのワーショッ プに参加した。会場は福井県越前市の国際木版画アーティスト・イン・レジデンスMI-LABであり、講師は鉄井裕和氏、湯浅克俊氏、Kate MacDonagh氏の三名であった。
ワークショップの冒頭では、MI-LAB代表の佐藤氏から施設の紹介があり、これまでに約50カ 国から300人以上のアーティストがMI-LABで滞在制作を行ってきたこと、また和紙と木版画をつなぐ国際的な創作拠点としての役割が説明された。
使用した越前和紙とその特徴
今回のワークショップでは、MI-LABが所有する越前和紙三種類を用いて講師三名による摺 りの比較を行った。いずれの和紙もドーサありとドーサなしがある。
① 卯立の工芸館で漉かれた楮紙(柾判53×40cm)
国産楮を主原料とし、緑色の甘皮が少量混ざっていて触った感触が少し粗い。職人が時間を かけてじっくり作った、ある意味貴重な和紙である。工芸館は職人が和紙を作っている一連の工程を見学できる施設でもある。
② 岩野平三郎製紙所の雲肌麻紙(柾判53×40cm)
雲肌麻紙は楮と麻の繊維が絡み合い、雲のような模様をもつ紙で、初代岩野平三郎氏が奈 良時代に作られていた麻紙の製法を研究の末、現代に復興させたと言われている。初代平三郎氏が画家の横山大観と書簡を交わしながら理想の紙を共に作り上げたという歴史を持つ。
③ 山田製紙所のパルプ+麻紙(柾判53×40cm)
山田ひとみ氏が紙を漉く工房。MI-LABで滞在制作をするアーティストに越前の紙に触れてほ しいとの思いから、練習用の紙を提供している。
講師による摺りのワークショップと所感
鉄井裕和氏
ドーサありの卯立の工芸館の楮紙と岩野平三郎製紙所の雲肌麻紙については「適正な厚み があり、色の出方が良い、顔料の滲み具合や裏に抜けてくる加減も良い。雲肌麻紙はやや厚手のため、浮世絵木版画を摺るには卯立の工芸館の楮紙のほうが作業しやすいと感じた。」と述べた。
また、山田製紙所のパルプ+麻紙は「厚みは良いが、湿し加減によっては紙同士が貼り付 きやすく、顔料の滲みが多くなる傾向がある。波打ちが多い印象だが1日寝かせれば見当があわせやすくなるかもしれない。いずれも紙にも個体差がみられる。」と説明した。
湯浅克俊氏
「卯立の工芸館の楮紙(ドーサあり)と雲肌麻紙は絵の具ののりが良いが、ドーサなしの 紙は毛羽立ちが強く、ドーサの有無によって表情が大きく変わるため、作品を制作する上でどちらの紙が向いているかは好みの問題である。山田製紙所のパルプ+麻紙は柔らかく、シワが寄りやすく伸び縮みも激しいため、紙を版木に置くのが難しい。糊を使わず顔料のみで摺ると美しく仕上がる。」と語った。
Kate MacDonagh氏
全ての和紙をゴマ摺りで試し(糊を少なめ、もしくは使用せずあえて絵の具の粒子を均一に 摺らないことでゴマのようなまだらな質感を表現するテクニック)、それぞれの紙の発色や質感の違いを比較した。3種類の中では山田製紙所のパルプ+麻紙を気に入られたそうで、「穏やかな色味と風合いがあって、最もしっくりくる。自身の求める表現に合っている」と語った。
まとめと考察
短い時間ながら、講師それぞれの視点と三種類の越前和紙の個性に触れることができ、非常 に充実した学びの機会となった。どの紙にも、摺りの感触や色の出方に独自の特徴があった。紙の良し悪しは単純な優劣で語れるものではなく、制作する作品によって適性が変わる。素材と表現の結びつきを考える貴重な機会となった。今回のワークショップで三つの産地の和紙に触れ、その成り立ちや技術、そして紙を支える人々の思いを改めて知ることで、和紙への理解が単なる知識から実践的な感覚へと変わった。今後の制作においても、紙が持つ個性を生かしながら、自身の表現をさらに深めていきたい。
① ②
①湯浅克俊氏の摺り終えた作品が並べられている様子。
②テーブルに並べられた版木やばれん、刷毛、摺り終えた版画。
③Kate MacDonagh氏の摺り終えた作品が並べられている様子。

④鉄井裕和氏が摺っている様子。

④Kate MacDonagh氏が摺っている様子。
【5日目】10月17日


