【1日目】10月13日

担当:小川信人

概要

  1. 行程表
  2. 赤間亮先生
  3. 田中求先生
  4. エレノア・リンさん
  5. ケイト・マクドナさん
  6. 安芸真奈さん
  7. まとめ

1、2025年10月13日行程表

10:00 赤間先生挨拶

10:10 関係者自己紹介

10:30 田中求先生お話し

11:30 Q&A

12:00 エレノアさんお話し

12:45 Q&A

13:05 昼食休憩

14:30 ケイトさんお話し

15:30 Q&A

15:50 安芸さんお話し

17:00終了

2,赤間亮先生のお話し

立命館大学アートリサーチセンター赤間先生より今回のワークショップの目的、意図についてお話しがあった。主な概要は下記の通り。

この取り組みは新進芸術家人材の育成を目的としたものであり、和紙生産地を巡る木版画表現ワークショップの名の通り、和紙、木版、表現がキーワードとなる。和紙に関する知見を深め、和紙産地を取り巻く課題の記録と発信も行う。また、和紙や木版を愛する仲間や国際的なネットワークを構築する。

3、田中求先生のお話し

高知大学田中求先生より「和紙と原料生産における現状とこれからの可能性」についてお話しをいただいた。主な講義内容①和紙とは何か?②和紙原料産地と推移③今後の可能性

  1. 和紙とは何か?

かつては国産原料で国内の工房で漉かれた紙であり、日本の生活文化の基盤であった。日本全国に和紙の産地が116箇所存在。しかし、近年は行き過ぎた資本主義や近代化の影響から一部の工房を除き海外産の原料を使用し、工場そのものを海外に構える工房も。これらは和紙の質の変化をもたらし、フォクシング(紙のシミ)や発色の悪さを招く恐れがある。この問題には紙を使用する職人や作家、修復士と紙漉き職人の情報共有の欠如に起因するところも大きい。

  1. 和紙原料産地と推移

楮の生産において高知県と茨城県は2大産地であり、高知は近年まで100年以上最大生産地、茨城県大子町は本美濃紙、越前奉書紙に使用される高質な那須楮の生産地である。

栽培適地は日射量と降水量が多い山村の傾斜地であり、日当たりが良く風通しが良い場所が好まれる。水田など耕作放棄地は水はけが悪く失敗する事もある。谷ひとつ違えば質が変わると言われるくらい環境は大切。和紙原料の生産は近年著しく衰退している。植林やクワなどへの転換、輸入原料、高齢化、獣害など複数の要因が関与。

  1. 今後の可能性

高知県柳野地区を例に変遷をたどる。これらの問題はユネスコに和紙が登録され和紙が見直された事や、ネットの発達等により問屋を通さず販売できるようになったことで兆しが見える。独自で楮を栽培しようと試みる産地も増加。

遊休地が増えている今は栽培拡大の機会ととることもできる。原料農家、紙漉き職人、使い手が密にコミュニケーションを取ることが重要。



4,エレノア・リンさん

ケンブリッジ大学付属フィッツウィリアム美術館所属。主な講義内容・レンブラントが使用した和紙、フィッツウィリアム美術館に所蔵されている木版画、レベッカソルターさんのお話し。

・レンブラントが自身の作品に和紙を使用。1650半ば同じ作品でありながら洋紙、和紙それぞれ使用した作品を紹介。東インド会社との貿易により1640年以降和紙が手に入るように。1640年代からレンブラントの作品に和紙の使用が認められる。この時の和紙は越前和紙という説が濃厚。

・フィッツウィリアム美術館に所蔵されている木版画の展示も時々開催される。ある時は雪に着目し、決め出しという摺の技法に着目した事も。これも和紙だからできる事である。

・レベッカソルターさん

ロイヤルアカデミー会長。自身も木版画を作成し、来日して木版画や美術を学んだ時期もあった。フィッツウィリアム美術館はレベッカさんと協力して彼女が日本滞在時に集めた資料を管理している。著書にJAPANESE FAMOUS PRINTSがあり、木版画についてかなりの知見を持っていることが伺える。

5、ケイト・マクドナさん

ケイトさんはアイルランド出身の木版画家&アーティスト。今回のワークショップでは実演も行う。お父様は舞台役者であり、自身の作品では「二面性」に着目し、日本の能からインスピレーションを受けたこともあるという。

黄色、緑、青、赤各色をテーマとした作品を紹介。金と銀の光、夜と薄明りなど、作品はとても洗練されており、浮世絵とは対比にあるような美しさがあった。

高知の和紙を使用した作品や、展示に額を使用せず、素材を活かした取り組みも行っている。

6,安芸真奈さん

高知県出身の木版画家。一旦高知を離れ上京するも、自身のルーツを再確認し子供の頃から関心のあった土佐和紙を使用した作品作りを数多く制作。薄い紙で摺ってから裏打ちを施す方法や、紙を寝かせて摺る方法、紙から着想を得て作品制作する事も。和紙漉き職人さんとの対話を通しご自身の要望を伝えることもある。

抽象的な作品にはどこか温かさがあり、営みを大切にしている安芸さんの思いを感じ取ることができた。

7,まとめ

ワークショップ初日(10月13日)は田中先生の講義や各プレゼンを通し和紙の現状や課題、和紙を使用した新旧様々な取り組みについて考える日となった。

和紙を使用している作家や職人は和紙漉きの後継者不足や材料の問題について漠然と意識していたと思うが、近頃の現状に相当な危機感を抱いた事であろう。レンブラントが魅了されたように現代の作家や木版職人にとっても和紙はなくてはならない存在だ。赤間先生のお話しにあったキーワード「和紙」「木版」「表現」が全て詰め込まれたような一日であった。

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