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担当 野田倫加
この日は幸草紙工房を見学させていただいた。最初は実際に幸草紙工房で使われている窯や使っている水のことなど、どんな環境で和紙の製作を行っているのかを知ることができた。
幸草紙工房では茨城県の大子那須楮を主な原料としており、美濃の楮を使うこともあるという。しかし、原料が違うと全く違う紙になるのだそうだ。また、美濃で大子那須楮を植えても美濃の楮になってしまうというのは驚いた。
昔から窯で楮を煮ていて、錆が出ないように窯は拭いているそうだ。和紙を作る上では軟水で柔らかい水が良いとのことで、水の苦労も語ってくださった。深いところの水ではなく、浅い水を使っているとのことで、水の違いにも和紙づくりへの影響があることをはじめて知った。
次に「ちりとり」の作業を見せてくださった。台の上に煮た楮が置かれていて、それを水の中に浸けて不純物を取り除いていく。茶色い部分が筋で、表と裏、両方の筋を取り除いていく。一皮ずつ丁寧にやっていき、この作業には4日かかるという。
次は「ちりとり」をした楮の繊維を分散させる作業を見せていただいた。紙打石と呼ばれる石の台に「ちりとり」をした楮を置き、二つの木づちで叩いていく作業である。木づちは丸い形をしていて松の木で出来ており、真ん中の部分が高く作ってある。美濃の伝統的な道具で幸草紙工房では15年は使っているという。紙打石の表面はざらざらとしていてこの台で楮を打つと、繊維がもわっとするらしい。叩きながら楮を広げていって、一通り叩いたら裏返してまた叩いていく。ある程度したら石板に水をかけてまた叩いていく。裏表が叩き終わったら、それを折りたたむまでが1セットで、これを2セット行うという。実際に打たせていただくと、ペニャペニャとした感触がした。これが和紙になるのか、すごく不思議だった。
ほかにも、実際に使っているそぎ簀や桁を説明と共に見せてくださった。
立原位貫さんの話題で、越前奉書と美濃の紙の違いを話してくださった。この二つの紙の違いは紙の裏側に出ていているようで、実際に見せていただいた。この二つの紙の違いが今回のワークショップの出発点であるという。実際に比較したものを見せてもらうと、裏側の絵の具の染み方が違っていた。立原位貫さんは江戸時代に摺られた紙を求めていたようで、手紙でやり取りをして越前奉書と美濃の紙を比較し、絵の具の発色、絵の具が紙の裏までどれだけ染み込むかを重視していたそうだ。
最後に前日に見学をした鹿敷製紙場ではステンレスを使っているのを思い出し、窯を使う上で鉄分の心配はないかを質問した。「楮を水に潜らせるのでそこで、鉄分は流れると思われる」と説明してくださった。このワークショップで最初に見学をしたのが鹿敷製紙場、その次が幸草紙工房で、この二つは高知と岐阜で離れていて使っている道具も環境も違い、和紙の特性がそれぞれ異なることを実感する体験だった。
次に美濃竹工房を見学させていただいた。実際に鈴木豊美さんが紙を漉いているところを見せてくださり、鈴木竹久さんが説明をしてくださった。「紙は素材だから生かしてくれる人がいて初めて紙」という言葉が印象に残っている。本美濃紙には1300年の歴史があり、規定が厳しく、「かぎつけ」「そぎつけ」のそぎ簀を使うなど、指定要件を満たして本美濃紙であると認められる。
美濃の紙の特徴として、十文字漉きという漉き方があるそうだ。横に漉くのが主流で、そこに縦揺れを加えたものが十文字漉きである。繊維を横に並べ、縦に乗せるのだという。横に5回、縦に5回。これを繰り返していく。また、紙の手前が厚くなりやすいため、手前と奥で3対7の割合で水を敷いて漉いていく。鈴木さんは紙の厚さは感の世界と語っていた。また、紙漉きはリズムとタイミングでもあるそうだ。繊維の一本一本をバラバラにしないと紙にはならないそうで、トロロアオイという「ねり」を使うことによって、バラバラにした紙の繊維を一本一本コーティングさせることが出来る。
漉いた紙は一枚一枚を一本の糸と一緒に重ねて束にしていた。なぜ重ねた状態の紙を一枚一枚はがすことが出来るのかは、トロロアオイの「ねり」によって紙がコーティンクされているからだという。「ねり」自体はねばいけど、次の日には水になっているそうだ。不思議に思ったが、鈴木豊美さん曰く、「素晴らしいねりのおかげ」なのだそうだ。
次に板干しの工程を実際に見せてくださった。鈴木竹久さんが両手で持った状態の紙を見た時、「原料がないのにあるような顔をしている」というのがこの時、何となく実感できたように思う。慎重に紙を板の上に運んで、馬のたてがみで出来た刷毛で空気を抜くように紙を撫でて板に貼り付けていた。板の表面はどれも白く、紙の繊維が板にくっついて白くなっているという。
次に板干しした紙を剥がす作業も見せていただいた。一枚の板に上下で2枚の紙が板干しされていて、上から剥がしていく。実際に剥がす作業を体験させていただくと、板から徐々に剥がす時の音が印象に残っている。最後に漉いた方を板にはりつけることで剥がした時に綺麗な方が表にくるようになっていて、そちらを表にして重ねていく。
最後には二階の部屋で漉いた後の紙を見せていただいた。紙の厚さを10段階で分けていて、一枚一枚を厚さごとに振り分けていく。薄い紙は国宝や文化財を守るためで、表じゃなく裏で支える紙だからこそ特にいい紙でなければならない宿命にあるという。最初の方で話してくださった「紙は素材だから」と繋がる内容だった
【3日目】10月15日
