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担当 澤永実季
楮畑の見学
楮は登り降りのきつい斜面で日差しが強い場所で栽培されている。楮の世話は草刈りが主。土佐の楮は日を浴びてよく育つ。伝統的な収穫方法は鎌だが今は手鋸やチェーンソーも使うそうだ。楮の株は毎年ぐんぐん伸びて枝になる。中には100年以上も枝を伸ばしている株もある。和紙にするのは1年目の枝で2年目以降の枝は繊維が固くて使えない。天敵はツタカヅラやネナシカズラなどで楮に巻きついて傷がついてしまう。風が吹くとコウゾ同士が擦れ合って傷になり強く丈夫な繊維になる。酸性の土壌ではあまり育たないそう。原料農家の高齢化問題は想像以上に深刻で原料の生産量は年々減少し、紙漉きの職人も楮の栽培に関わっている。
鹿敷製紙の工場見学
鹿敷製紙の代表濵田博正さんに工場の紹介と和紙製造工程を教えていただいた。
代々からの「原料に拘れ」という教えが、「国産に拘れ」になり鹿敷製紙の信念となっているそうだ。紙の製造工程
- 楮を栽培する。
- 収穫した楮を蒸して蒸し上がった楮の樹皮を温かいうちに剥がす。
- へぐり 楮の表面の黒い皮を包丁で削り白皮にする。へぐり後乾燥させて保存することもできる。
- 煮熟 それを消石灰、ソーダ灰、苛性ソーダなどのアルカリ溶液で煮る。煮る時の鍋はステンレス製で鹿敷製紙では紙に鉄はダメという考えから原料および紙に鉄製品が触れないことを徹底している。
- アク抜き 仁淀の伏流水を使って水晒しをする。
- ちり取り 流水の中で一目見ただけでは分からないようなチリも取る。
- 脱水 原料の水分を取る。
- 打解 打解機で繊維をほぐす。
- 解繊 ナギナタビーターで解繊する。
- 抄紙 高岡式と呼ばれる機械を使用して紙を抄く。
濵田あゆみさんの活動
鹿敷製紙代表濵田博正さんの妹である濵田あゆみさんの活動について話を聞かせていただいた。あゆみさんの活動は多岐に渡り、畑の管理や様々な形の広報を行なっている。畑の管理はボランティアやWWOOFという農場での労働を希望するウーファーにホストが食と住を提供する(金銭のやり取りは発生しない)制度を活用して楮を生産する人材を確保している。広報としては海外で舞台芸術について学んだ経験を活かしてWashi +という土佐和紙の魅力を演劇やダンスを通して伝える活動をされている。さらに、和紙育という子どもが和紙に触れる機会を作っている。今回のワークショップに参加するまでの私は和紙として売られているものを買って使っているだけで、和紙に対する知識がなかったのだということに気づいた。現在、大学院に在籍しているので和紙の生産の背景や現状、問題点を制作仲間と共有してお互いに和紙に対する知識をつけていきたい。
田村寛さんのお話
今回のワークショップのために用意していただいたのは小判楮紙、23判楮紙の2種類。紙は原料の産地、煮熟方法、乾燥方法で変わってくるそうだ。途中、参加者の1人から摺った時に版に紙の繊維が持っていかれるという問題についての質問が出た。これは私も何度か経験したことがあるが絵の具の水分量に問題があったのかと考え紙に原因があると考えたことはなかった。田村さんはその紙に使われた煮熟剤が強すぎるのではないか。と回答されていた。少しでも手間を省くために強い煮熟剤を使うと細胞質が壊れてしまう。その結果、繊維同士の絡みが弱く紙としても弱くなることがあるという。紙は生きていて、吸ったり吐いたりしている。それによって紙の持つ水分量は時間と共に少なくなる。そのため冬場の寒い時期に作った紙の方が強い。よくできた紙は元々の水分量が少ないそうだ。田村さんは紙の情報をもっと知ってもらいたいとおっしゃっていた。紙の情報は問屋を挟むことで分からなくなる。確かにお店に並んだ紙は情報を聞いても教えてもらえないことが多い。最後に田村さんがアーティストには様々な紙に挑戦して欲しいとおっしゃっていた。私も紙の情報を知ることで紙の特性を活かした制作に挑戦したい。そのために紙を購入する時に情報を知ることができるシステムになれば良いと感じた。
片岡あかりさん(尾崎製紙所)のお話
尾崎製紙所四代目の片岡あかりさんから紙漉きに携わるようになったきっかけと紙についてのお話を聞かせていただいた。今回のワークショップのために用意していただいたのは土佐清帳紙、清光箋の2種類。現在、土佐清帳紙を古くから伝わる伝統の技法で作っているのは尾崎製紙所さんだけなのだそう。楮のへぐりは甘皮を残し、煮熟剤は消石灰、田ざらし(日光の力で漂白する方法)をしてネリは長野のトロロアオイを使っている。紙の種類によっては胡粉を混ぜて和紙の目を詰ませることもある。松の板に貼り付けて乾燥させている。尾崎製紙所ではススキの茎を継いで作った茅簀を使っている。紙漉きの技術を受け継いでいくためにも道具は欠かせない。このような道具を作れる人が少なくなっているという現状を知らなかった。今、それについて私たち作家ができることはあるのか考えている。
摺のワークショップ
江戸木版画 摺師 岡田拓也さん、ケイト・マクドナさん、湯浅克俊さんの3人による摺を見学した。講師の方々がそれぞれの板木を用いて6種類の紙に摺り違いを探る。使った紙は下記の6種類。
田村寛さんの小判楮紙、23判楮紙
鹿敷製紙さんのHKP厚口、 RKM 12匁以上
片岡あかりさんの土佐清帳紙、清光箋
鹿敷の紙は安定して摺れる。手漉きの紙は越前に比べて薄いようだった。
【2日目】10月14日
