相撲デジタル研究所
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立命館大学アートリサーチセンターがデジタル化に取り組んだ小島貞二コレクションを活用した相撲研究所です。デジタル技術でアーカイブされた相撲資料を広く公開していきます。 オンライン「相撲史年表」も御覧下さい。
はじめに

小島貞二コレクションpresents相撲番付と『武江年表』から見る勧進大相撲史


江戸時代の相撲、勧進大相撲の歴史を相撲評論家・歴史家であった小島貞二のコレクションした当時の相撲番付と、江戸時代の出来事を編年体で著した斎藤月岑著『武江年表』の二つを参照しながら辿ってみたいと思います。題して「小島貞二コレクションpresents 相撲番付と『武江年表』から見る勧進大相撲史」。

勧進相撲は芝居・吉原と並んで江戸三幅対と称され、江戸の人々を熱狂させました。その相撲についての出来事を江戸時代の市井の出来事を事細かく書き記した希代の歴史書『武江年表』の記事でたどり、その時の相撲番付と浮世絵・史料で浮き彫りにします。相撲興行が提供したさまざまな噂話のネタに江戸の人々がどのような反応を示したのか、その一端でもご理解いただけると幸いです。

相撲番付を提供する小島貞二コレクションは、相撲評論家であり相撲史家として著名であった小島貞二氏(1919~2003)が長い年月をかけて集めた古番付を立命館大学のアートリサーチセンターが委託を受けて写真を撮りデジタルデータベース化を行ったものです。寛保2年(1742)から平成18年(2006)までの264年間の相撲番付、約1000枚をアーカイブしています。その間の相撲興行すべてを網羅しているわけではありませんがほぼカバーしている個人としては稀なコレクションです。今回の展示では膨大な相撲番付の中から大相撲の歴史に残る名力士、名場面、名勝負、事件等に関わる番付をほんの少しですがご紹介いたします。

『武江年表』は江戸後期から明治にかけて活躍した著述家斉藤月岑による編年体の書籍です。江戸の町で起こったさまざまな事件や出来事、話題、風俗を他の書籍などを引用しながら古い順に書き記してあります。正編8巻は天正18年(1590)から嘉永元年(1848)まで、続編4巻は嘉永2年(1849)から明治6年(1873)までの記事を収めています。特に地震洪水などの災害、火事、疫病などの記事、芝居相撲、見世物、開帳などの興行、有名人文人墨客などの死亡記事などは詳細に著され、江戸時代研究には必携の書籍です。今回は金子光晴校訂による東洋文庫版の『武江年表』を参照しています。