B09木戸前の混雑

「大江戸しばゐねんぢうぎやうじ」「木戸羽織」
English Commentary
絵師:吟光 判型:大判/錦絵
出版:明治30年(1897)東京
資料番号:arcUP2060 所蔵:立命館ARC.

【翻刻】
昔の木戸番は長羽織を着て 手拭ニ頬を包み 扇をかざし 木戸前に並び 客を招き札を売る。
長羽織は立お山(女方)よりの仕着せにて 何れも五ツ紋の裾模様。六尺手拭と扇は座頭より送るもの二て 其紋所を染出したり。木戸番は是が為に寒風を凌ぐとぞ    千秋
木戸番の着たる羽織も手ぬぐひも 長く続いた大入芝居

【解説】
 木戸番とは、劇場表の木戸前に並んで、客を呼込み、また札売り・受取りを担当する劇場従業員である。その出で立ちには、手拭いを頬被りにし、長羽織を着ているが、その長羽織は一座の立女方(女方のトップ)から送られるもので、紋はその役者紋がついていた。手拭いと扇には、座頭(立役トップ)が用意したので、木戸前でその一座の役者のトップが誰であるかがわかるのであった。呼び込みの声は、明治に入ると消滅したが、観客の入退の混雑を防ぐ役割を担っていた。(a.)

【用語解説】
 木戸番、立お山=立女方(たておやま)

【関連コーナー】
 「化粧と衣裳