B10芝居茶屋

「大江戸しばゐねんぢうぎやうじ」「大箱提灯」
English Commentary
絵師:吟光 判型:大判/錦絵
出版:明治30年(1897)東京
資料番号:arcUP2056 所蔵:立命館ARC.

【翻刻】
大箱提灯
顔見世釣看板の左右へ出すを大箱提灯と云い 又茶屋飾物の下のふれんは中村市村の両座にては紺地へ白 森田座は紺地へ赤にて家号(いゑな)と紋所を染め出すを例とす 序に云う櫓幕は初日の前日(まへび)より千秋楽まで懸け置き 休み中は除く   千秋
てうちんの 灯影も当る顔見世の その看板に 人も大数

【解説】
arcUP5784_s.jpg 大箱提灯とは、劇場表の中央の屋根の上に掲げられた櫓の下の位置に往来に突出すように下げられる吊り看板を照らす大きな提灯のことであるらしい。吊り看板は猿若町に移ってから使われるようになったが、吊り看板が描かれる絵画資料では、その脇の提灯が描かれている例は少ない(参考)。むしろ寛政前後の絵本に大きな2帳の提灯をみることができる。ここで描かれる櫓は、興行中のみ張られていたといい、初代広重の「江戸名所百景 猿わか町よるの景」では、休み中の劇場と芝居茶屋の様子をみることができる。Ebi0305_s.jpg
 本図は、芝居茶屋の座敷から劇場正面を見ている図であるが、芝居茶屋の嚆矢は、若衆歌舞伎時代の茶見世までさかのぼるといい、次第に高給客の芝居観劇を仲介し、観劇を助けるさまざまな機能を持つにいたった。幕間にはここで料理をたべ、着替えもし、贔屓役者との会合の場ともなった。芸者や遊女を呼ぶこともでき、祝儀をはずまないといけないため、芝居見物が大きな出費となる元凶だった。(a.)

【用語解説】
 千秋楽

【関連コーナー】
 「劇場と興行