B12観客の評判

「大江戸しばゐねんぢうぎゃうじ」「風聞きゝ」
 English commentary
絵師:吟光 判型:大判/錦絵
出版:明治30年(1897)東京
資料番号:arcUP2045 所蔵:立命館ARC.

【翻刻】
 風聞きゝ
芝居の打出後 其座の表へ芝居好きの人三々五々集り 狂言の筋 役の当否(よしあし)を語り合ふを芝居より人を出し 此評を聞かせて訂正する事あり 堺町ふきや町頃には 江戸橋親父橋辺へ人を出し 帰り客の評判を聞かせたるよし   千秋筆
大入りを きつと請合ふ見物の その評判も 当り狂言

【解説】
 終演後、劇場前では、観劇の興奮冷めやらぬまま、芝居好き同士が、屋台の蕎麦をすすりながら素人評判に時を忘れた。口さがない評判も、むしろ劇場側にとっては参考になる。そこで、幕内からはいわばスパイを送り出し、彼ら評判子の評を取材させ、そこで聞き取った観客声を反映させて、幕を差替えたり、内容を変更したりもしたのである。堺町葺屋町頃とは、天保の改革で江戸三座が、浅草猿若町に移動させられる前の頃という言う己で、中村座市村座の両座がそれぞれ堺町と葺屋町にあった。(a.)

【用語解説】
 打出し

【関連コーナー】
「観客の楽しみ」