A2-4 歌舞伎の酒呑童子.

「四天王大江山入」

絵師:豊原国周 判型:大判錦絵3枚続
上演:明治20年(1887)3月 東京・中村座
「渡辺綱 中村福助」「源頼光 市川権十郎」「侍女伏屋 坂東秀訥」
「粧姫 嵐瑠幸」「酒呑童子 片岡市蔵」
所蔵:立命館ARC  所蔵番号:arcUP5382

【解説】
 歌舞伎「四天王大江山入」での一場面である。市川権十郎演じる源頼光と、坂東秀訥演じる源氏の武士石和八郎の妻の伏屋、中村福助演じる渡辺綱、嵐瑠幸演じる粧姫、片岡市蔵演じる酒呑童子らが酒宴を開いている。
 酒呑童子伝説は歌舞伎演目としても人気であった。たとえば、江戸・中村座の脇狂言に「酒呑童子」が入っている。興行毎に早朝、儀式的に上演される脇狂言は、座の設立当時に人気であった演目が選ばれている。頼光説話の世界は、歌舞伎の顔見世狂言としても定着したが、その中心となる酒呑童子説話自体は、そのポピュラーさ故に、四天王らの周辺の説話に重点が移行していたようだ。「酒呑童子出生記」や「酒呑童子語」、また「けいせい大江山」などでは、酒呑童子伝説の中心ともいえる頼光らと酒呑童子の対決そのものより、むしろ茨木童子や山姥などの伝説に多くの場面をさいている。
 明治時代になって、江戸時代の上演慣習が崩れていくなかで、本作のように再び「酒呑童子」が本狂言としても取り上げられるようになったようだ。(小a).
【参考図】「脇狂言 酒呑童子」

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絵本戯場年中鑑(下)』(立命館ARC arcBK02-0023)