4.5.0.藤娘
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「藤娘」は、東海道の宿場大津(滋賀県大津市)で江戸時代初期から名産とされた民衆画大津絵の代表的な画題。歌舞伎は、大津絵に描かれた物見遊山の享楽的な女性を舞踊化してきたが、文政9年(1826)9月江戸・中村座で、変化(へんげ)舞踊の一つとして演じられ、現在では女方舞踊の代表作として扱われている。所作題は「歌へす/"\余波大津画(おなごりおおつゑ)」、作詞勝井源八、作曲四代目杵屋六三郎、振付藤間大助(二代目勘十郎)・四代目西川扇蔵。「座頭」「天神」「船頭」「奴」と「藤娘」をあわせた五変化で、二代目関三十郎が演じた。
これを、昭和12年(1937)3月に六代目尾上菊五郎が、ひなびた味わいの「潮来」を廃して、岡鬼太郎作詞の「藤音頭」に替え、松の木にからむ藤の花の精が娘に化身して踊るという趣向に作り替えた。さらに、平成26年(2014)には坂東玉三郎と中村七之助が二人立ちの「二人藤娘」を初演し、映画「国宝」にも主人公2人が初めて共演する作品として選ばれ、対照的な個性を際立たせながら息を合わせて踊られて印象に残る。中央の松の古木に、大輪の藤の花が一面に咲き誇る舞台に、大きな藤の枝を担いだ1人の娘が現れる。黒塗りの笠を被る娘は大津絵から出てきた藤の花の精である。舞台上に立つ松の木は、娘が想いを寄せる男を象徴している。曲中には男性の浮気性をなじる詞章ですねてみせたり、打楽器の美しくリズミカルな藤音頭で酒に酔ってよろめきながら踊る娘の初々しい色っぽさ、恋しい男性が帰るのを引き止めるなど、様々な女心を踊っている。やがて鐘の音が聞こえてくると、娘は藤の枝を担ぎ「空も霞の夕照に名残を惜しむ、帰る雁がね」と、夕焼け空に飛ぶ雁を見上げる。(上杉o)
