4.3.0.鷺娘

「鷺娘」は宝暦12年(1762)4月江戸市村座で二世瀬川菊之丞により初演された江戸時代中期に誕生した長唄の舞踊である。明治25年(1892)に九世市川団十郎が復活させた。
 物語に登場するのは人間の男に叶わぬ恋をした白鷺であり、白の打掛を纏う人間の娘へと姿を変えて現れ、一途で切ない純粋な恋心を舞う。しかし人間ならざる者が抱いた恋への執着はそのまま業となり、やがて本来の鷺の姿に戻った娘は地獄の責め苦に悶えながら息絶える。
 この演目の最大の見せ場は「引き抜き」「ぶっかえり」と呼ばれる衣装の早替わりで、白の打掛から赤、そして最後の鷺の姿へと変化してゆく。一人の役者が踊り続ける形式は体力的にも技術的にも難度が高い。女形の第一人者である五代目坂東玉三郎がこの演目を得意とし、現代では鷺娘に関しては彼の解釈と様式が上演の事実上の基準となっている。背景や経緯を語らず、恋の苦しみという情感そのものを身体で表現する舞踊劇であり、動きの中に深い情念が凝縮されている。
(元田o)

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