46.庄野 女人旅(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説

目録に「庄野女人旅」と書かれる通り、女性二人連れの旅人を描いたものと考えられる。本図をみていると、『保永堂版』の原宿の図が思い出される。この原宿の図には、本図と同じように女性二人連れの旅人が描かれており、うち一人は煙管を持った年増の女性。この二人については、確証はないものの「仮名手本忠臣蔵」八段目、戸無瀬と小浪による道行の場面との関連を指摘する説が知られている。本図についても、若い娘が杖を持ち、年増女性が煙管で前方を指し示す図様は、八段目を描いた浮世絵に類似の作例も見られ、どことなく八段目を連想させるものとなっている。

風景解説

一面の雪景色が描かれている。画面中央には鳥居が描かれ、その先には社が見えている。眼を引くのは画面左の遠景に描かれる、丸い形をした小高い丘。画中の書き込みには、「熊野ノ社白鳥塚」と記されている。丸い形をした丘が、書き込みにある白鳥塚と思われる。『東海道名所図会』の庄野宿の項では、白鳥塚のことを日本武尊の墓として紹介し、南には熊野の社があるとしている。今日では、日本武尊の陵墓はこの白鳥塚(現在の名称は白鳥塚古墳)ではなく、亀山市にある能褒野王塚古墳であると考えられている。『保永堂版』の庄野宿の図は、広重の風景画の中でも傑作に数えられる作品。本図では、広重は同じ庄野宿を全く違うテーマで描いている。

参考文献

渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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