1.日本橋(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説

 島田鬘の若い町娘風の女性が書かれている。頭には櫛やかんざしを挿し、振袖には千鳥と政界馬、網目の模様があしらわれている。女性が視線を吹けた先には幼い子供の姿。子どもはにこやかに女性の方を見ながら何か話しかけているようだ。子どもの頭は両脇と後ろ髪を短く残してあるのが印象的であるが、これは芥子坊主という髪型。江戸時代の用事に見られるもので頭頂きだけを残したものや前髪と後頭部を残すものなど、いくつかのバリエーションがある。子どもが右手に持っているものは「槍持」(さやの先端に羽毛の飾りをつけた儀礼用の槍を持ち、大名行列の先頭で振り歩く役割)をかたどった人形。

風景解説

 日本橋は慶長8年(1603)、日本橋川に掛けられた橋。五街道の起点となる場所で、北川には魚河岸があり、南側には高札場や晒し場があった。本図で描かれている日本橋は橋桁部分。積荷を載せた多くの船が日本橋川を行きかう様子がうかがえる。遠景に見えるのは富士山と江戸城、その手前に見える橋は一石橋。

〈参考書籍〉

渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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