38.藤川 女旅人(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説

 目録に見えるのは「藤川 女旅人」の文字。この記述に見える通り、女性二人だけの旅の様子を描いたものと思われる。江戸時代の旅は道中に危険が多く、女性の旅はさぞかし難儀なものだったと思われる。しかいs、東海道をはじめとする街道ものの浮世絵や名所図会などには、数多くの女性の旅人が描かれており、その数は決して少なくなかったものと考えられる。旅の目的としてはやはり社寺参詣が多かったようである。

風景解説

 ゆったりとした上り坂が描かれ、人々が行き来している様子が描かれている。広々とした道の両側には家々が立ち並び、賑わいを見せている。藤川宿は古くから交通上の要衝で、慶長6年(1601)に東海道の宿場町として制定されている。途中宿場の維持が困難となり、隣村である山中から住民を移し、以降宿場町が形成された。藤川宿の西には追分があり、東海道と三河沿岸の吉良方面へ至る吉良道との分岐点として賑わった。

参考文献

渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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