36.御油 〈本 直江(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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「本朝廿四孝」
目録には「御油〈本 直江〉と記されている。この〈本は「山本」の意味。二人は人形浄瑠璃や歌舞伎で有名な「本朝廿四孝」に出てくる登場人物で、武田信玄の名軍師・山本勘助の遺児。奥が横蔵、手前が慈悲蔵と言い、老母と一緒に暮らしているが、横蔵は実は武田信玄に仕える身。慈悲蔵も長尾謙信に仕え、直江山城頭と名乗っている。横蔵は謙信の子、景勝に面影が似ており、その関係から以前景勝に命を救われたことがあった。そして改めて景勝は横蔵を自身の身代わりにするために、母に仕官の話を持ち掛ける。母は以前横蔵が命を救われたことを含み、横蔵に切腹を迫るが、横蔵は拒否し、自らの右目をえぐる。そして実は武田信玄に仕えていることを明石、自らは山本勘助の名を継ぎ、弟には父から伝わる軍法の巻物を譲る。山本勘助には御油宿附近の生まれという言い伝えがある。なお、横蔵は五代松本幸四郎(故人)、慈悲蔵は三代目坂東三津五郎(故人)を思わせる容貌となっている。
風景解説
入り組んだ川の流れが描かれ、河岸にはいくつかの民家と柳の木々が見えている。遠方には山山が連なり、その向こうには富士山を望む。画面左上には「本野ヶ原 不二眺望」の文字。御油宿は隣の赤坂宿と並んで旅籠屋や飯盛女が多く、遊興の宿場町として有名であった。しかし、本図には御油宿から少し行ったところにある本野ケ原付近が描かれている。このあたりには、鎌倉時代に北条泰時が植えたとされる柳が生えていることで知られている。川は本野川。
参考文献
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