34. 二川(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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人物解説
花簪を挿し、石畳文様の入った帯を身に着け、源氏香模様のあしらわれた振袖を着ている。左の女性のかたわらには夏に涼を得るために用いられる「釣荵」が置いてある。人形浄瑠璃や歌舞伎には「双面物」という所作事の系統があり、二人の同じ姿をした女性が所作を行うというもの。ある登場人物に恨みを持つ人物の音量が、その人物の恋人の姿を借り、恋人と同時に出現するという筋がよく見られる。本図は双面(ふたおもて)と二川(ふたがわ)をかけていると思われる。
風景解説
ごつごつとした岩がむき出しになった崖が手前に描かれ、中景にはなだらかな斜面を配し、遠景には海を望む。白帆が多数浮かぶ海は遠州灘。画面の書き込みには「岩窟官能 山上」とある。これは岩窟観音のある岩屋山の上から海側を眺めた光景。この岩屋山は二川宿から少し東に進んだ場所にある。岩屋観音は天平二年(730)に行基が一体の木造千手観音を彫って岩穴に祀ったことをその始まりとし、付近には石仏郡がある。
参考文献
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