32.荒井(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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人物解説
老婆と若い男が描かれており、老婆は腰をかがめて右手に眼鏡を持ち、眼鏡越しに若い男の方をじっと見ている。旅人は菅笠を脇に置き、着物の裾を広げているように見える。この老婆は「人見女」や「改め婆」などと呼ばれ、旅人を取り調べている最中。箱根宿と本図に描かれた荒井宿は特に取調べの厳しい関所であった。特に女性は「入鉄砲出女」と言われる程、厳重で手形や身体的特徴の調査を受けた。男性に対しても取調べが行われたとされ、本図では一見男性とおもわれる人物が実は女性なのではないかと調べられていると考えられる。
風景解説
荒井宿は浜名湖の西岸に位置する。荒井の名は、遠州灘から打ち寄せる波が荒かったことに由来するとされる。画面の中央には小高い山が描かれており、山から手前に向って浅瀬に砂洲が伸びている。付近には松林が点々と見え、湖水には漁船がいくつも浮かんでいる。画面上部に書かれている「遠湖 堀江 風景」は、「遠湖」が浜名湖を指し、堀江という地名は浜名湖の支湖である庄内湖の北西にある。
参考文献
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