31.舞坂(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説

杖を突いている三人の女性が描かれている。一番左の女性は三味線をむき出しで逆さまに持って、棹の部分を肩にかけている。彼女たちは瞽女と呼ばれ、二、三人単位で街道沿いの家々を訪ねては門付けをして回る盲目の芸人。芸の内容は三味線の弾き語りや俗謡などで、各地に瞽女の組織があり、それぞれ藩の保護を受けて活動していた。『保永堂版』二川宿の図にも瞽女の姿が描かれている。

風景解説

 浜名湖の風景が描かれている。舞坂宿は浜名湖の南側に位置し、対岸には次の宿場である荒井宿がある。舞坂と荒井宿の間はもともと砂洲でつながり、東海道を通っていた。しかし、明応7年(1497)の大地震により砂洲は決壊し、浜名湖は遠州灘とつながって汽水湖となった。そうして舞坂宿と荒井宿の間には、今切の渡しが設けられた。左上に「今切 海上風景」という書き込みが見られる。本図は舞坂宿辺りから北側を眺めたものと思われ、右側が浜名湖の支湖のひとつである庄内湖付近であると考えられる。遠景に帆掛け舟や小さな漁船が浮かんでいる。

参考文献

渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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