29.見附(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説

 菅笠を被った旅人が二人人描かれている。左の立ち姿の女性は、煙管を手にして菅笠を軽く持ち上げ、顔を少し上に向けて何かを眺めている。女性の向井には合羽を着た人物がしゃがみこんでいる。手を手甲で多い、腰には護身用の脇差を指し、足には甲掛を付けているのが見える。右手には女性と同じく煙管を持ち、左手に持っているのは火はたき根付(携帯灰皿)と思われる。本図に描かれているのは見附宿で、見附宿の名前の由来には、京から東海道を下ってきた場合、最初に富士山が見えるのがこの場所であるからという説がある。よって二人は富士山を見上げていると考えられる。

風景解説

 見附宿の少し西にある天竜川が描かれている。画面右端に大きく描かれるのは、船の舳先と船を漕ぐ棹。広重お得意の近像型構図で遠近感を出している。何艘か浮かんでいる船は、高瀬舟と呼ばれる小型船。天竜川は古くから周辺の地域に水害をもたらしてきたあばれ川として有名で、水深が深いため徒歩渡しは出来ず、舟渡で対岸の浜松宿を目指した。

参考文献

渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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