27.掛川 田舎娘(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説

 手拭を姉さん被りにした若い女性が右手に大きなやかんの取っ手を握っている。女性のかたわらに描かれている幼い子供は左手に風呂敷包みを持ち、右手を女性のほうに向けてにこやかに何か話しかけている。本図で女性が持っているやかんとよく似たやかんが『保永堂版』の袋井宿の図にも描かれている。本図の場面設定は定かではないが、茶の産地として有名な掛川宿と関連づけられていることが想像できる。

風景解説

手前には川が流れ、橋の上に二人の旅人の姿が見える。橋を渡り切ったさきに鳥居があり、右側の中景には田植えをしている人々の姿もある。本図に描かれているのは、東海道二十六番目の宿場町、掛川宿を出て西に少し進んだところにある大池橋の付近。流れている川は二瀬川という。大池橋を渡ると秋葉権現で有名な秋葉山へと向かう道が分岐しており、その入り口には鳥居が建っていた。

参考文献

渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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