24.大井川 旅女(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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人物解説
源氏香模様の入った手ぬぐいを姉さん被りし、管笠を首からぶら下げ、左手に煙管入れを持って居る女性が描かれている。女性のかたわらにはハシゴのような形のようなものが置かれている。これは「輦台」といって、川の徒歩渡しで旅人を乗せる道具のこと。図に描かれているのは最も簡素な平輦台で、4人あるいは6人でかつぐ。輦台は料金に応じていくつかの種類があり、低い手すりのある半高欄輦台、高い手すりのついた大高輦台などがあった。また、より安価に川を渡りたい場合、輦台は用いずに肩車で川越をする方法もあった。大名や貴族などを乗せる、もっとも大きな大高輦台ともなると、人足は2、30人に達した。
風景解説
島田宿は東海道23番目の宿場町。江戸から見て大井川の手前に位置する。東海道沿いには徳川家に縁の深い天領や親藩、譜代大名の領地が多く、非常時に江戸を守る役割を担っていた。街道沿いにいくつかある河川に関しても防衛上の理由から舟渡や架橋が許されていなかった。なかでも大井川は大きな河川で、川幅も広かったことから「箱根八里は馬でも越すが越すに越されに大井川」と歌われ、東海道屈指の難所として有名であった。川越人足による徒歩渡しには時に危険も伴った。また大雨などで水量が上がると川留めとなり、旅人たちは東岸の島田宿か、西岸の金谷宿のどちらかに泊まって時を待つしかなかった。嶋田宿は規模も大きく、川越えの旅人たちでにぎわいを見せた。
〈参考文献〉
渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)
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