7.藤沢 照天姫(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
-
-
小栗判官と照手姫
女性がいざり車(車椅子)を引いている。女性の名は照手姫、いざり車に乗せられているのは小栗判官。小栗判官の伝承は古くから知られ、歌舞伎や人形浄瑠璃にも盛んに取り入れられた。小栗判官のモデルは常陸の小栗城主である小栗満重とも、息子の助重とも言われている。関東管領の足利持氏に対して謀反を起こした小栗は、敗れて相模国に落ち延びる。ここで盗賊である横山大膳の娘、照手姫を見初めて結婚の約束を交わすが、起こった横山大膳に家来もろとも殺される。小栗は息を吹き返すが、業病に罹って足萎えとなってしまい、病を治すために熊野を目指す。途中照手姫と再会し、お互いの素性に気づかないまま二人は旅を共にする。後に熊野についた小栗は湯治によって全快し、判官の位を得て常陸国の領地を回復、照手姫を再度探して妻にした。
風景解説
藤沢宿は東海道6番目の宿場。遊行寺の門前町として古くから栄えるとともに、東海道と江ノ島を結ぶ分岐点にあたり、江ノ島詣でや大山詣でなどに向かう人々も数多く立ち寄った。遊行寺は時宗の総本山として知られ、曽我物語などで知られる俣野五郎影平の開基、開山は遊行上人呑海と伝えられる古い寺院。小栗判官の伝承の中でも、業病にかかった判官を熊野に送りおどける手助けをしたのは遊行寺の上人であったとされる。広重の『保永堂版』では藤沢宿に描かれるのは遊行寺と弁財天の鳥居の風景だが、本図では広い街道と並木道、富士山を描いている。
〈参考文献〉
-
関連記事