3.川崎 麦藁細工(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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人物解説
姉さん被りの女性が着物をたすき掛けにし、座布団の上に座っており、左手にきれいな小箱を、右手にヘラのような道具を持って居る。座布団の手前や机には完成品と思われる箱が置いてある。これは大森の名産品であったとされる麦藁細工。大森は品川宿と川崎宿の間にあり、間の宿として栄えた。麦藁細工は近くの川崎大師でも名産品として売られており、大師詣での帰りに大森村で買い求める人もいた。『江戸名所図会』でも大森の名産として紹介されている。
風景解説
画面手前に大きく六郷川の流れが描かれている。六郷川とは多摩川下流の呼び名の事。川には渡し舟や帆掛け船の行きかう様子が見え、遠景には富士山を望む。川の中央の両岸には「六郷の渡し」の渡し場があり、左岸には渡船場と船場町の集落が見える。六郷川には慶長5(1600)年に六郷大橋が欠けられたが、度重なる洪水による流失と再建を繰り返し、貞享5(1688)年に流され以降は橋の再建はなされず、船渡市となった。
〈参考文献〉
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