23. 藤枝 セト川 歩行渡(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説
 本シリーズの目録には藤枝宿の項に「セト川 歩行渡」と書かれている。セト川とは、藤枝宿から少し西に行ったところにある瀬戸川のこと。女性は瀬戸川を駕籠でわたっているところ。この川は水量が少ない川で、一年の内半分以上は水が無く旅人は徒歩で通行することも出来る。しかし水が流れている時期は、場合によって旅人は川越人足の手を借りなければならなかった。
風景解説
 画面の端には「せと川 かち渡り」と記されている。馬の背に荷物を載せて渡る人や、天秤棒をかついでいる人などの姿が見える。川の深さはくるぶしが隠れる程度と考えられる。水量の多い時期には胸の辺りまで水に浸かることもあった。藤枝宿は田中藩の城下町である東海道22番目の宿場。田沼意次が治めた相良藩の相良城と藤枝とを結ぶ田沼街道の分岐点でもあり、交通上の要衝として栄えた。
〈参考文献〉
渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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