21.鞠子(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)

人物解説 

 前垂を掛けた女性が湯のみの載った盆を運び接客をしていると思われる場面。行方の上の箱に入っている円形のものは十団子というお菓子。ここは鞠子宿からしばらく西に進んだところにある宇津ノ谷峠付近の茶屋と思われる。十団子はこの付近の名物で、団子を紐などで数珠の様に丸くつなげたもの。宇津ノ谷峠の家々や茶屋で売られ道中の厄除けとしても親しまれていた。十団子には、昔宇津ノ谷峠に人を食べる鬼が現れるようになり、当地を訪れた在原業平が地蔵尊に祈願したところ、地蔵尊が僧侶が小さな姿に化けられるかと鬼の神通力を試す問いかけをしたところ、鬼が小さな玉となって見せたので、僧はそれをすかさず杖で十に砕いての見込み、以降鬼の災いはなくなったという伝説がある。

風景解説

 雪に覆われた街道と鞠子の宿場。画面中央の遠景に見えるのは、宇津の山越えで知られる宇津ノ谷峠の一体。鞠子宿は東海道20番目の宿場町。隣の府中宿が東海道の中でも最も大きな宿場の一つであるのに対して、鞠子宿は比較的規模の小さな宿場町であった。

〈参考文献〉

渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)

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