19.江尻 三保 羽衣(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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羽衣伝説
本図では、三代豊国と広重は天女が天上に戻っていく姿を効果的に描くため、あえてシリーズの基本構造を上下逆にしている。羽衣の伝説は日本各地で説話として語り継がれており、特に三保の松原の伝承が有名。能にも取り入れられ、三番目物の「羽衣」として知られている。歌舞伎にも羽衣伝説の趣向は見られ、本図での天女の姿は、歌舞伎での天女の扮装を意識したものと思われる。三保の松原付近には天女が羽衣を掛けたと伝わる「羽衣の松」という樹齢650年に及ぶ松の老木がある。
風景解説
手前に三保の松原、中景に駿河湾、そして遠景に富士山と回りの山々が描かれている。駿河湾には多数の船が行き来しているのが見える。三大松原の一つとして有名な三保の松原は画面にはごく一部が描かれているのみ。江尻宿は18番目の宿場であり、駿河では府中に次ぐ規模の宿場として繁栄した。巴川の左岸に位置し、入江の尻の部分にあたることから江尻と呼ばれるようになったと言われている。
〈参考文献〉
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