17.由井 宮城野 志のぶ 姉妹(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
-
-
「碁太平記白石噺」
美人二人が刃を交えて何やら物騒だが、これは「碁太平記白石噺」の登場人物、宮城野と信夫という姉妹が剣術稽古に励む姿を描いたもの。この芝居は安永9年(1780)正月に江戸の外記座で上演された。同じ年に歌舞伎にも移され、以降人気を博してきた。慶安4年(1651)に起きた、由比正雪による幕府転覆未遂事件である慶安の変と、享保2(1717)に奥州足立村で起きたとされる姉妹による仇討ち事件に取材したもの。志賀台七に父与茂作を殺された姉妹が、宇治常悦(由井正雪がモデル)に助けられ、苦難の末父の仇を討つという筋。本図と由井小説が結び付けられているのは、この地の出身である由井正雪と掛けてあるからに他ならない。
風景解説
ここは由井(由比)宿と奥津宿の間にある薩陀峠。この付近は古来、東海道屈指の難所として知られ、危険を冒して断崖の波うち際を歩かなければならなかった。江戸時代に入って峠道が整備されたものの、急勾配の山道を越えるのはやはり難儀なことであった。
〈参考文献〉
-
関連記事