16.蒲原 宿引(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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人物解説
男性を引っ張っている女性は留女と呼ばれる。宿場の旅籠屋の前で客引きをする女性達のこと。そのやり方はずいぶん荒っぽいものと見得、本図ではがっしりと右手を旅人の左手に絡ませ、力任せに旅籠屋の入り口へと引っ張っている。よく見ると旅女の左手には旅人のものと思われる行李などの荷物も握られている。御油宿や赤坂宿は留女や飯盛女で良く知られており、しばしば浮世絵に描かれるが、本図で蒲原宿で結びつけた理由は判然としない。
風景解説
画中の書き込みに「不二川舟渡」とあるように、手前の川は藤川。この川は急流で徒歩渡しは難しく、舟渡であった。吉原宿から間に宿の本市場を越え藤川を舟で渡ると、間の宿の岩淵につく。この辺りは富士の眺めの良い場所と知られ、本図も岩淵から富士を眺めたものと思われる。源平時代、平維盛が布陣したのは富士川の西岸。
〈参考文献〉
渡邊晃『謎解き浮世絵叢書 三代豊国、初代広重 双筆五十三次』(二玄社・2011)
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