14.原 白酒売(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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白酒売り
扇、着物白抜きの文字、酒樽の「白酒」の文字が示すように、女性は白酒売の行商人。原宿と吉原宿の中間に位置する柏原の立場では白酒が名物として知られていた。柏原だけでなく、沼津や吉原など、この辺り一帯の名産品であった。歌舞伎では白酒売りという役柄が時折舞台に登場した。特に有名なのは「助六由縁江戸桜」の舞台に登場する白酒売。この舞台の白酒売りは、実は仇討ちを志す曽我十郎という設定で登場する。また、名女方である三代目瀬川菊之丞が天明5年(1785)正月桐座「春昔縁英」という舞台で女白酒売りの所作事を演じて好評をとったように、女白酒売りという趣向も見られる。
風景解説
コマ絵をはみ出す雄大な富士が描かれている。富士の頂が画面外にはみ出すというユニークな趣向は『保永堂版』の原宿ですでに試みられている。本図は原そのものではなく、街道を少し西に進んだあたりが描かれている。「柏原立バ」という文字は、宿場と宿場の間の休憩所「間の宿」を指す。
〈参考文献〉
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